ハイテクベンチャーがイノベーションをけん引する
2007年06月08日
豊かな未来社会をつくるイノベーションの重要性が高まっている。政府の第3期科学技術基本計画(※1)では、革新を続ける強靭な経済や産業を実現するという「イノベーター日本」が大きな目標として掲げられている。少子高齢化が進み、他のアジア諸国などから経済的に追われるなか、イノベーションによって付加価値の高い製品やサービスを継続的に生み出すことが重要だと認識されている。
5月27日には、政府の長期戦略指針「イノベーション25」も発表された。生涯健康、安全・安心、多様な人生が送れる社会など、イノベーションで築く2025年の社会像が描かれ、それらを達成するための政策的なロードマップが示されている。イノベーションが起こりやすい環境を整備するため、首相を本部長としたイノベーション推進本部を政府内に設置する予定。
経済産業省では、「イノベーション・スーパーハイウェイ構想」の実現を目指している。科学技術を効果的に事業化につなげるようなネットワークを強化し、国家プロジェクトを人材の育成や交流の場にも活用するとともに、研究成果の市場投入を加速するため、様々な施策を講じている。
日本経団連も注目している。昨年5月の定時総会では、「INNOVATE NIPPON(イノベート・ニッポン)」を旗印にして、イノベーションを継続的に実現していくシステムを整備する必要性を御手洗冨士夫会長が訴えた。年初に発表された「希望の国、日本」という将来ビジョンでも、イノベーションの推進を優先課題の一つに取り上げている。
既存の大手メーカーがイノベーションの担い手に想定される場合が多いが、大学や大企業から輩出されるハイテクベンチャーの重要性も高い。大学発ベンチャーは5年間で3倍増の1500社超に達したが、株式上場に至ったのは20社程度に過ぎない。社長が学生時に創業したミクシィに代表されるネット系では急成長する企業もあるが、バイオやナノテク分野などの製造業系では伸び悩んでいる企業が多い。
研究開発や実証試験などに時間を要するのは避けられないにしても、黒字化までの期間が想定以上に長くなると、廃業に追い込まれる企業が続出する可能性がある。製品やサービスの開発・生産・販売などの戦略を立案し、実践できる人材層を拡充するとともに、ハイテクベンチャーとの取引を促す商習慣を醸成することが求められる。大手メーカーとともに、ハイテクベンチャーがイノベーション創出の両輪になることが期待される。
(※1)1995年に施行された科学技術基本法に基づいて策定される、科学技術の振興に関する中期計画。第三期は2006~2010年度の5年プログラムで、2006年3月に閣議決定された。
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