中国でのIT構築の難しさ

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2007年03月26日

  • 小原 誠
中国と日本では、多くの違う点があるが、社会インフラに対する安心感も、違いのひとつである。

例えば中国では、青信号で横断歩道を渡る時も、常に四方への注意が必要である。まず自転車が信号に関係なく進入して来る。車は赤信号でも右折できるルールで、あまり歩行者優先は配慮してくれない。結構な緊張感が要求され、とても日本のように信号だけを信じて渡るわけにはいかない。鉄道、航空などの公共交通機関も、リニアモーターカーの営業運転など進んでいる点もあるが、正確性という面ではまだまだ安心感を持てない。遅延や欠航などのリスクを常に考えて、代替策を準備しておくことが肝要である。

これらの社会インフラに対するリスクは、旅行者にとっては非日常的な刺激かもしれないが、ビジネスにとっては隠れたコストとなってしまう点が問題である。

中国でITを構築する場合にも、社会インフラが課題になる場合が多い。一般的なオフィスビルでLAN環境を構築する際でも、床下配線が可能なOAフロアーは多くはなく、空調能力に不安がある場合にはサーバーの設置場所にも苦労する。さらに、瞬断や計画停電など、中国の電力供給の問題もある。例えば、日本では、サーバー管理などのITインフラを外部に委託するデータセンターサービスという選択肢がある。しかし、中国ではデータセンター側が、停電など社会インフラのリスクを負担すると、コストが大きくなると想定される。そのためか、中国ではデータセンターサービスはそれ程普及していない。

また、中国で業務システムを開発する場合には、日本での仕様、設計内容の理解が求められる。日本語を理解するIT技術者が多いことが中国開発のメリットであるが、それでも行間を読むような日本の業務知識などは、充分な説明が必要なことが多い。このような中国と日本とのコミュニケーションコストも、隠れたコストのひとつである。考えてみれば、日本語で解り合える社会インフラは、日本の最大の安心感かもしれない。

中国でITを構築するには、このようなリスクとコストに対する注意が必要である。日本でIT計画を策定し、その実施を声高に叫んでも、現地のリスクとコストを理解しなければ中国での実現は難しい。 中国でのIT課題解決のために、私たちDIR-SinoComは、日系中国進出企業のITを支援する中国ローカリゼーション・プログラムを用意している。日本企業に求められるサービスレベルと中国でのリスクを理解し、日本と中国双方の顧客満足度向上につながる最適なソリューションを提供することに、今後とも勤めたいと考えている。

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