10年に一度の転換点と情報サービス産業

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2007年03月14日

  • 坪根 直毅

2006年から2007年にかけて、Web2.0の社会現象化、Windows Vistaの発売、NTTによるNGN(Next Generation Network)フィールドトライアルの開始、といった出来事があった。ITの世界では技術、利用の両方でパラダイムシフトが起きつつあるが、過去にもこのような大きな変化の時期があった。1995年がそれにあたる。1995年はマイクロソフト社がWebブラウザ「Internet Explorer1.0」の配布を始めた年であり、また、米国サン・マイクロシステムズ社がインターネット環境における標準ソフトウェア技術である「Java」を発表した年でもある。この他、パソコンの標準OSとなる日本語版Windows95が発売された年でもある。すなわち1995年は、企業がインターネット、PCを本格的に活用しはじめる契機となった年でもあり、これに伴い、インターネットを活用したさまざまなビジネスも生まれることとなった。その意味で1995年はこれ以降の10年間のITおよびその活用の起点となった年ということができる。同様に2007年も、今後10年間のITの動向を左右する年になりそうな予感がするが、1995年との違いは何であろうか。そのひとつは、ITの社会・企業における基盤化がさらに進展したことに伴い、社会全般に影響を及ぼす事象へのIT対応のニーズが増してきたことであろう。また、サービス基盤(Web上で提供されるさまざまなAPI等)を利用することにより、ITエンジニアでなくても手軽にシステムを構築することができる環境が整いつつある、という点も指摘することができよう。

情報サービス企業としても、得意とする適用業務(アプリケーション)のノウハウを深め、ミッションクリティカルなシステム構築・運用により顧客をロックインし、顧客生涯価値の最大化を図る、という従来路線に力を注ぐとともに、内部統制ソリューションのような業務・業種を問わない横断的ソリューションの模索や、粒度が細かいものの需要が見こまれる、サービス基盤を活用したソリューションへの対応に留意する必要があろう。

1995年以降、企業において急激にIT化が進展したが、その一方でIT生産性パラドックスに再び注目が集まり始めたのも1990年代半ば以降である。このITと生産性を巡る議論の帰結は、社員教育や組織変革によるIT利活用、すなわちITサービスの重要性である。ITの技術、利用両面のパラダイムシフトが新たなIT生産性パラドックスを生まないためにも、情報サービス産業にはパラダイムシフトに応じた新たな「ITサービス」の創出が望まれる。

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