新味ないブッシュ大統領の経済・財政政策

RSS

2007年02月26日

  • 大和総研 顧問 岡野 進
ブッシュ大統領の年頭予算教書、年次経済報告が発表された。中間選挙で大敗して、議会を民主党に握られ、支持率の落ち込みの回復もままならない大統領としては、なんらかの政治的回復策を経済政策に求めたいはずであるが、それにしては新味のない内容だといわざるをえない。予算の骨組みは(1)義務的経費と国防予算の増加を認め、(2)国防以外の裁量支出を名目ベースで横ばいに抑制する、(3)エネルギー、運輸(高速道路建設の補助等)に増額、(4)教育、地域開発を減額、となっておりこれまでのブッシュ経済政策からの転換や新しい政策は見当たらない。

実際の08年度の予算の姿を行政予算管理局の見通しに沿ってみていこう。財政赤字は08年度2,393億ドル見込んでいる。07年度見込みの2,441億ドルから若干の減少を期待するものとなった。ただし、支出は2兆9,018億ドルで07年度より1,180億ドル増加する。赤字減少の主な要因は景気が順調に推移する前提のもとでの税収増期待である。

ただし、予算上の税収増見込みはやや慎重なスタンスで組まれているといってよい。昨年の場合、予算教書では、所得税収(個人所得税+法人所得税)を06年度1兆2,747億ドル、07年度1兆3,569億ドル見込んでいたが、06年度の実績は見込みより1,231億ドル多い1兆3,978億ドルとなったし、07年度見通しも1,540億ドル引き上げられて1兆5,109億ドルとなった。景気の見方はさほど変わっていないので、当局の試算以上に税収があがった。今回も07年度、08 年度は法人税収の減少を見込んでいるが非現実的かもしれない。景気がスローダウンしていた割に、企業収益は好調で増収増益を維持しており、景気がスローダウン基調を脱してきているので税収が見通しを上回ってくる可能性は高い。

支出サイドをみていくと、国防予算を優先しその他の予算の抑制を図っている姿は変わっていない。08年度の国防支出は6,246億ドルと前年比4.1%の増加を見込んでおり、イラク駐留の継続を前提としている。世論はイラクへの増派に不支持であるが、ブッシュ大統領は増派を強行し、当面イラクからの撤兵を行う気がないことを示している。ところが09年度はイラク撤兵を前提としているためか国防支出は5629億ドルに縮小するシナリオである。ブッシュ大統領は次期政権が民主党に移る可能性が高いことを前提に次期政権にやっかいなイラク撤兵問題を残してしまおうとしているのではないか、との見方さえある。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。