100円ショップ

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2006年10月30日

  • 佐藤 清一郎
100円ショップ。どうやら日本のことらしい。あるセミナーに参加した時、米国人が、「来日すると思うのだが、日本は、100円ショップのように見える」と言っていた。購入するかどうかは別にして、不動産を含め、日本に来ると、すべての物が安く見えるらしい。

確かに、これまでの日本の状態を見ると、バブル崩壊後、価格破壊があり、その後も長引くデフレで、物の値段が上がっている感じはない。逆に、テレビ、デジタルカメラ、DVDレコーダーなど、家電ショップで買えるものは、ほとんどが、時間が経つと、値段が下がってしまう。また、土地も、一部地域を除いては、上がっているとの印象は薄い。国民経済計算によれば、1998年末では3000兆円を超えていた国富(正味資産)は、2004年末、約2600兆円程度まで減少している。この間、土地等の有形非生産資産は、約1700兆円から1250兆円に減価しているので、これが大きく影響しているのがわかる。これに加えて、為替の動き。円の価値は減価が続いている。

デフレが長期化しているし、円安だしということになれば、この米国人が言うことも、満更的外れでもない。欧米人からすると、日本に来ることは、小奇麗な発展途上国に来るようなものかもしれない。日本は、先進国なのに、何か変な気がする。当然だが、この状態は、日本人から見たら、外国に行くと、すべての物が高く思えるということだ。欧米(特に欧州)に行った場合、日本にいれば、1000円程度の食事をしたつもりでも、円換算してみたら3000円とかになってしまうこともよくある話だろう。また、バッグ、香水、洋服などのブランド品が妙に高く感じられるかもしれない。昔と言えば、ブランド品をより安く買おうと、日本を抜け出し、外国へ行った時期もあった程、日本の物価は高かった。また、土地に関しても、アメリカや豪州の不動産購入が煩雑に行われるほど、日本の土地は高かった。これは、これで異常だったが、日本人が、欧米(特に欧州)に行って、妙に物が高いと感じてしまう現状も、個人的には、納得できない部分がある。

この状況は、今後も続くのかどうか。今の100円ショップの状況を脱却する手立ては、簡単に言えば、日本国内の物価が上がること、為替が円高になることだと思うが、今のところ、どちらも期待できそうな雰囲気ではない。しかし、日本が、いつまでも発展途上国のように、欧米から見られるのもおかしい。たとえば、5年後も状況は同じかと言われれば、それは違うような気がする。日本の現状について、これでいいと思う人、何かおかしいと思う人、様々だろうが、地球上には、日本を、100円ショップだと思っている人がいることは知っておくべきだと思う。

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