国立大学法人の債券発行に関して
2006年08月30日
文部科学省の第2次国立大学等施設緊急整備5か年計画によると、各種整備の所要経費は最大約1兆2000億円と試算されているが、厳しい財政事情を踏まえ、国立大学法人等の自助努力による新たな財源確保の可能性について言及されている。これにより、国立大学法人の資金調達、とりわけ、債券発行の問題が急速に浮上してきた。
国立大学法人法第三十三条(長期借入金及び債券)及び国立大学法人法施行令第八条(土地の取得等)によると、(1)国立大学法人等は政令で定める土地の取得や施設の設置・整備等の費用に充当するため、債券を発行することができる、(2)資金の具体的使途については、国立大学法人法施行令第八条に規定されている、(3)債券の発行に関する事務を銀行等に委託できる、の3点がポイントとして挙げられるが、特に重要なのは(3)だろう。
もし(3)が認められていなければ、国立大学法人が債券を発行する場合、一切の事務手続きを自前で行わなければならず、膨大な事務負担が生ずることになってしまう。加えて、募集・販売も自ら行うとすれば、現実の発行はきわめて困難となろう。(3)が重要な意味を有している理由がここにある。
一方、私立学校(法人)の学校債は、あくまで消費貸借契約に基づく借入金であり、商法の規定に基づき発行される社債等には該当しないことから、現状では証券取引法第二条第1項に定める有価証券には該当せず、証券会社が引受人、銀行等が管理会社になる法的根拠が希薄である。したがって、学校債は現行法の下では自らが募集人となり、事務管理も自前で行わなければならない状況である。
国立大学法人が債券発行に踏み切るとすれば、本年2月に国立大学財務・経営センターが発行した債券がモデルケースとなろう。ポイントは「国立大学法人法に基づく受託会社を置く」ことにより、発行等に係る事務手続きの一切を銀行等に委託することができることである。
加えて、国立大学法人が債券を発行する場合、格付取得の問題が浮上してこよう。たとえば、R&Iの格付基準に照らし合わせると、ミクロ指標としては運営費交付金の動向や経常収益、経常費用、経常利益等に加え、固定比率、固定長期適合率などが注目されよう。また、マクロ的には経営戦略が問われよう。
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