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昔を懐かしむ?投資判断に活かせる?立会場で聞く音声の効用

2006年07月27日

新林 浩司

情報技術の発達と認知科学の発展は、新しい視点に基づいた応用技術をもたらす。思いも寄らぬ分野で変り種の技術が使われることも少なくない。

近頃は取引所の電子化に伴い、金融商品を売買する立会場は無人化が進んでいる。大勢の人々が場内にひしめき大声を上げながら手サインを送った情景は過去のものになりつつあり、そんな現場で働いていた金融のプロフェッショナル達も、今はコンピュータの画面に取り囲まれて取引するようになった。そのような中、米国では昔の立会場の様子を音で再現するコンピュータ・ソフトウェアが売られている。このソフトウェアは、取引所の雰囲気をかもし出す効果音だけでなく、人が実際に競りをしているような音声を作り出す。面白いのは、競りの声が市場データに連動しており、値動きの他、売り手と買い手の呼び掛け、売買成立などの情報も含めて音声に織り込まれるため、現実に取引されている市場の盛況度合いを音情報で伝えることができる点にある。

この製品は、立会場が賑やかだった当時の雰囲気を風物詩として懐かしむためのものではなく、金融機関で働くプロフェッショナルが売買判断の材料に使うためのものだ。ソフトウェアの開発を手伝った人の話によると、立会場に人が居た頃は「相場が放つエネルギー」を音で体感できたということである。音がもたらす臨場性には電光板から読み取る以外の情報を伝達する力があり、売買判断の大きな助けになるということで、これはプロならではの研ぎ澄まされた感性のなせる業かも知れない。

活況の様子を音で伝達する手法は、様々な場面で応用が効きそうだ。自宅でインターネットを使ってオークションや株式トレードを行う際、あたかも取引会場に座っているような効果音が聞こえる場景を想像してみる。参加者の熱気を肌で感じることができれば、売買している実感が高まり、自身の集中力も増すように思える。しかし注意したいのは、その場の雰囲気に飲み込まれることだ。買う気が無かったバーゲン品を皆につられて思わず買ってしまう、などという経験は誰でもあるだろう。他人の興奮に巻き込まれて惑わされると、冷静な判断を下せなくなる恐れがある。バーゲン会場の買物ならまだしも、相場がもたらす高揚感のあまり、株式売買で自分を見失って大火傷、というようなことは避けたいものだ。百戦錬磨のプロと普通の人との違いは、こういう所に現れるのであろうか。

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