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ストライカー主義のわな

2006年07月03日

原田 泰

ワールドカップ予選リーグでの日本惨敗とフォワードのふがいなさで日本中ががっかりしている。しかし、日本が惨敗したのは点が取れなかったからだろうか。まったくの素人だが、データを見る限り、フォワードが駄目だから惨敗したとは言えない。

日本が取った点は2点、失った点は7点である。さすがに、2点で予選リーグを突破した国はないが、3点で予選リーグを通過した国は、スウェーデン、オランダ、フランスと3か国ある。3点以上取ったのに進出できなかった国はコスタリカ、コートジボワール、チェコ、韓国、チュニジアと5か国あるが、それでも8分の3の確率で通過できたわけだ。4点以上取って進出できなかった国はコートジボワール(5点取っている)だけだ。一方、失点が3点以下で進出できなかったのはパラグアイ、アンゴラ、クロアチアである。

得点と失点の差、得失点差が1以上であれば、すべての国が予選リーグを突破している。パラグアイは得失点差0で予選リーグを通過できなかったが、オーストラリアは0で突破している。すなわち、3点取って2点取られるか、4点取って3点取られるかであれば、決勝リーグに進出できていたことになる。日本は2点取って7点取られている。足りなかった得点力は1-2点、不足していた守備力は4-5点だ。ペナルティ・キックを取っておかしくない場面もあったのだから、足りなかった得点は0.5-1.5点だった。したがって、日本により必要なのはストライカーではなくて守備力ではないか。

もちろん、いくら私が素人でも、守備だけしていては駄目だというのは分かる。サッカーは、野球のように攻守が判然とは別れていない。攻撃していれば点は取られない。守備だけで消耗しては、かえって点を取られやすくなる。点を取ることによって前かがりになる相手から更に点を取りやすくなるというのも分かる。しかし、サッカーとはそう簡単には点の入らないゲームだ。日本のフォワードは確かにふがいないが、頼りがいのある外国のフォワードもいつも成功している訳ではない。成功しているところだけを後でテレビで見るから、いつもシュートを決めているように思うだけだ。

日本経済がさらに発展するためには、新しい産業が必要だと言う。確かにそうだが、そううまい具合に新しい産業が生まれる訳もない。ロナウドもクローゼもクレスポいないことは分かりきっているのに、足りないのはストライカーだと言っても仕方がない。日本は、自動車や電子製品では常に新しい流れを巻き起こして世界で勝負している。これらの産業は、日本の誇るストライカーだ。しかし、輸出製造業以外の産業の効率は低く、それらの商品・サービスは高コストで内外価格差を引き起こし、日本人の生活水準を引き下げている。育てることの難しいストライカー産業より、それ以外の低生産性産業の生産性を引き上げる方が、日本を豊かにする上ではずっと簡単なのではないか。

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