資源国オーストラリアの別の顔

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2006年06月14日

  • 山田 雪乃

中国やインドの高成長を背景に、資源輸出国への注目が高まっている。豪州は鉄鉱石や石炭を始め銅やウランなどの資源輸出大国であり、資源の需要国にとって、なくてはならない存在になってきた。ところが、意外にも、その金融市場の先進性と厚みについては知られていない。

まず目を引くのが、「インフレ・ターゲット」を採用した金融政策だろう。80年代は平均8.2%の高インフレに泣かされたが、92年の導入後、物価上昇率は平均2.5%と見事ターゲット(2~3%)内に収まっている。景気は92年以降拡大し続け、実質GDP成長率は平均+3.7%に達している。

さらに、個人投資家の層の厚さや不動産投資信託市場の成功、年金市場の将来性など、日本の金融当局が聞いたら「理想郷」と思わずため息が出てくるほどの先進性である。

何がそんなにすごいのか。まず、個人投資家の株式保有率は、日本の22%に対して、豪州は55%と約2倍。「不動産投資信託」は日本で2000年に導入されて以来、その低い流動性が問題視されているが、豪州で1971年に最初の不動産投信が上場して以来、その高い流動性と情報開示を足がかりに時価総額は8.9兆円へ拡大し、米国に次ぐ世界第2位の規模を誇っている。

最後に、年金市場。日本では2002年に導入されたばかりの「確定拠出型年金制度」も、豪州では1986年に導入されている。2015年には、豪州の年金市場は日本の2倍以上に拡大し、アジア・オセアニア市場の半分以上を占めるとみられている。

どれをとっても、豪州は軽く15年は日本の先にいると言っても過言ではない。だが、なぜこれほどまで世界の最先端をいっているのだろうか。90年台に積極的に進められた規制緩和と民営化に拠るところが大きいだろう。同時に、オージーたちの陽気で楽観的な気質も一役買っていよう。スポーツをこよなく愛するオージーたちの、ルールを遵守するスポーツマンシップも影響しているかもしれない。いかなる環境の変化も内部に吸収し、柔軟に反応し、成長の糧としていく豪州に、学ぶべきことは多い。

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