株券ペーパーレス化と発行会社
2006年06月05日
2006年5月24日、日本証券業協会、証券決済制度改革推進センターは、同日開催された「証券受渡・決済制度改革懇談会」において、実務界としての株券ペーパーレス化実施予定日を2009年1月とするという合意が行われたと発表した。もちろん、これは、あくまでも実務界としての実施目標を定めたもので、法令に基づく正式な決定ではない。しかし、実務レベルでの実施目標日が定められたことで、上場株券ペーパーレス化の移行日が事実上固まったと考えてよいだろう。 この発表を受けて、最近、よく「株券ペーパーレス化に向けて、発行会社は何か対応することはあるか?」といった質問を受ける。この機会に、これについてコメントしておきたい。 発行会社が、制度上、一斉移行に際して必要とされている主な手続は、次の4つである。
このうち(1)と(3)は、基本的には、証券保管振替機構や株主名簿管理人の指示に従って処理することとなるものと思われる。従って、問題となるのは(2)と(4)となるが、必要なのは公告と口座開設である。その意味では、それほど複雑な手続は必要とされていないとも考えられるだろう。 ただ、発行会社にとっては、株券ペーパーレスへの移行後の問題が発生するという可能性もある。一例を挙げると、名義書換を忘れていた失念株主が、突然、現れて、権利の確認を求めてくるような場合である。失念株主としては権利を喪失するか否かの瀬戸際にある。従って、これに対する対応を誤ると、損害賠償を求められる可能性もあるだろう。また、金融機関に開設された「特別口座」の費用負担の問題もあるだろう。本来、暫定的に開設された「特別口座」が、結果として長期間にわたって存続することとなった場合、その費用を誰が負担すべきかが議論となる可能性が高い。いずれにせよ、発行会社も、2009年1月の実施予定日を目指して、対応を検討する必要があると言えるだろう。 |
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
「内巻」(破滅的競争)に巻き込まれる中国自動車業界
2025年06月11日