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港湾改革の進展と今後の地方の対応

2006年05月26日

加藤 三朋

我が国では港湾は国・地方自治体が公共事業として整備し、自治体が管理を行うという典型的な公共物として位置づけられてきた。即ち、港湾整備ではナショナル・ミニマム的な観点での量的充実が専ら重視されてきたわけで、ネットワーク機能の向上やロジスティック機能の効率化から港湾の整備・運営を位置づける戦略的な視点が長きにわたり欠落していた。しかし、アジア域内水平分業の進展に伴い域内主要ハブ港の地位を巡る主導権争いが激化している事実、あるいは、我が国主要港湾の競争力低下が数字の上からも明らかになってきた事実等を背景に、これまでのような港湾整備・運営の考え方も抜本的な修正を迫られる状況となっている。

今日、アジア域内の港湾間競争の焦点は荷主・船主等の利用者サイドの低コスト化ニーズへの訴求能力をいかに高めるかという点に集約される。具体的には、船主等がサプライチェーン・マネジメントを展開する上で寄航ハブ港に求める定時制の遵守、多頻度入港、ターミナル専属性等の条件をいかに競争力ある形で構築するかが極めて重要な政策課題となっているのである。

こうした変化を背景に具体化してきたのがスーパー中枢港湾構想である。2002年の東アジアの国際コンテナ(トランシップ)市場規模は香港1,914万TEU(※1)、韓国・台湾が1,160万TEU強に対し、日本が1,404万TEUと全体の規模としては遜色ない。但し、我が国の場合、コンテナ取扱港が多数に分散する構造上、アジアの他主要港に比する「規模の経済性」の実現が困難との問題があった。同構想はスーパー中枢港湾(京浜、阪神、伊勢各港)を国内および東アジア域内のコンテナフィーダー輸送のハブ港として位置づけ、その機能強化(効率化推進、船舶大型化対応等)のために新たな整備を進めるもので、言わば、国家戦略的な視点での“港湾の選択と集中”といえる。

今ひとつ注目される改革の動きは埠頭公社の規制緩和、民営化である。埠頭公社は外貿埠頭の整備を一体的に行い、船会社等の専用利用のためにターミナルを長期リースする機能を有し、我が国コンテナ輸送の7割を担う。我が国港湾の競争力改善には、この埠頭公社の体質改善も必要との認識から、今回の港湾法等の改正において、管理運営主体の財団法人から株式会社への変更、および管理運営主体に対する各種規制緩和が図られることになった。

PFI方式、特区方式、スーパー中枢港湾における次世代高規格コンテナターミナル整備・運営方式等にみられるように、近年、上下分離方式によるターミナル整備・運営への民間参入はトレンドとして定着しつつある。我が国港湾全般に官から民への変化は既に明らかである。

一方で、今後、焦点となってくるとみられるのは地方港湾の財政負担問題とその対応である。港湾管理者(地方自治体)は水域・外郭施設の利用に対する料金徴収が禁じられる等、元来、港湾収入ベースの財政基盤は極めて脆弱で、港湾運営のかなりの部分を一般財源と地方債に依存してきた。地方港湾の生き残りをかけた競争の中、利用料を引き下げる動きも出ており、港湾財政の悪化がさらに進展する情勢ともなっている。地方分権の進展下、港湾改革を巡る様々な変化が予見される状況にあるといえるであろう。

(※1)TEU(Twenty-foot Equivalent Unit)
コンテナの本数を20フィート・コンテナに換算した場合の単位。

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