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インターネットで地上波テレビ同時再送信は必要か

2006年05月22日

櫻岡 崇

今年1月よりスタートした竹中平蔵総務相主催の懇談会「通信・放送の在り方に関する懇談会」は、第11回会合(2006年5月10日開催)でそれまでの議論の論点を整理したが、ユーザーの視点から見て、いったい何がしたいのかが見えてこない。

上記懇談会では、通信と放送の融合を進めるべきで、そのためには両業界の規制について抜本的な見直しが必要とのことである。しかし、コンテンツ配信の伝送路・方式の違いにともなう著作権処理の問題についての対応は必要としても、融合まで踏み込む理由は読み取れない。どうも世界のトレンドに遅れまいと、融合が目的化しているようなニュアンスが感じられる。懇談会のコメントが通信業界寄りの見方をしており、地上波テレビ・コンテンツを開放せよ的な雰囲気があるのも気がかりである。

たしかに、地上波テレビは、日本において最も強力な映像コンテンツ・パワーを持つ業界である。しかし、規制や放送枠の限界を考慮すれば、創作及び発信の場としてのインターネットは、コンテンツの自由度が飛躍的に高いのである。たとえば、最近の地上波テレビではドラマの視聴率低迷、バラエティ番組の人気の傾向が続いている。しかし、たとえバラエティ番組が人気でも地上波放送枠の100%をバラエティ番組が占めることはありえないのである。一方、インターネットならば、特定の芸人だけに絞ったバラエティ・チャンネルを制作することも可能である。

地上波コンテンツの再送信でネットワーク帯域を圧迫すれば、そうしたネット独自のコンテンツの視聴機会を奪うことにもなりかねない。ブロードバンド普及が進むにつれて通信トラフィックの増大は問題となっており、地上波デジタルテレビの再送信に必要な帯域を考えると、インターネットの伝送路も無限大とは言いがたいのである。

ユーザーとしての視点に立てば、官主導で通信・放送の融合を前提としたルールに移行した結果、インターネットの自由なコンテンツ発信環境が台無しになることは避けてもらいたいものである。地上波テレビのコンテンツ活用は、既に製品化されているソニーのロケーションフリー製品など宅内コンテンツのIP伝送機器や大容量HDD、多チューナー搭載のDVDレコーダー等の組み合わせでも相当程度が実現可能である。問題は、コストダウンのスピードぐらいである。伝送路の一本化によるコスト・パフォーマンス向上よりも、長期的に見た付加価値創造の仕組みを優先してもらいたい。

米国の動画投稿・閲覧コミュニティーサイト「YouTube」が日本人ユーザーも巻き込んで人気化している。また、Flashアニメーションの普及により、プロダクション等の力を借りずに個人の能力で勝負するコンテンツ・クリエーターが出現しており、そこからTV放送されるものまで出てきているのが実際である。アニメ以外で見ても、「電車男」などインターネット発のコンテンツが大ヒットするケースは既に体験済みである。

映像コンテンツ配信事業者の都合を優先させるのではなく、視聴者、コンテンツ創造者の両者の出会いを活性化させる著作権処理体系の構築を考えるべきだろう。

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