食の安全と原産地統制

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2006年04月06日

  • 山中 真樹
BSE問題や鳥インフルエンザ問題などを受けて、食の安全性に対する国民の関心が急速に高まっている。食という人間の生存に文字通り必要不可欠なものが、深刻な事態を惹起している以上、国の総力をあげて、さらには国家間の連携を強化して、拡大阻止そして根絶に向けて対処していかなくてはならない。

加えて食の安全性を確保するためには、こうした病原体の拡大阻止・絶滅のみならず、その食品の素材は何か、誰がどういう手法で育成・栽培したのか、流通過程はどうなっているのか等々についての正確な情報が消費者に向け開示されることが望ましい。生産者、流通者においても、こうした情報を積極的に開示していくことが当該食品の差別化、ブランド化につながり、付加価値の向上に資することとなろう。

ところでワイン好きの方ならご存知であろうが、フランスをはじめとする欧州各国には、「原産地呼称統制制度」と呼ばれる制度がある。特定の産地で特定の手法でつくられた農産物のみに、特定の原産地を名のることを可能とする制度である。ワインに限らず、チーズなどの乳製品や家禽類など幅広い農畜産物が対象とされている。こうしたことにより、安全性を含む食の品質が確保され、生産者・消費者双方がそのメリットを享受しているのである。

わが国でも一部の県で同趣旨の「原産地呼称管理制度」が日本酒や焼酎、米などを対象に実施されている。こうした動きが他の自治体にも拡大していくことを期待したい。と同時に、国や法律レベルでも原産地の統制を促進していくことを望みたい。但し、原産地の統制・管理は単に食の安全性確保のみを目的とするものではない。地域の伝統的な食文化の保護発展をも目的とする。それ故、全国ベースでの画一的な規制とは相容れない。審査・認定などの運営は地方にまかせつつ、「にせブランド」などの侵害行為に対しては国が取締りを強化し、抑止・排除していくことが望ましかろう。

民間(事業者団体等)、地方行政、国が役割分担をしつつ、トータルとして食の安全性や食文化の維持発展が確保される仕組みが構築されることを望みたい。

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