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金融資産による事業ポートフォリオ分散法

2006年03月17日

松原 英人

先 週末に発表された量的緩和政策解除後も株式市場がむしろ底打ち傾向を示したことは、過剰貯蓄(投資)・過少消費という問題の本質を市場が見誤ってはいない 徴しとして前向きに評価したい。量的緩和政策の期間中、結局、拡大したのは対政府信用だけである。対民間貸出金は、あたかも人口減少時代を見据えたかのよ うに一貫して縮小した。反面、ゼロ金利にもかかわらず、普通預金に金が集まる傾向にも全く変化は見られなかった。設備投資は実額、GDP比、いずれもバブ ル期に頭打ちとなって久しいため、銀行勘定は主として政府による運転資本融資、つまり限界企業に対する政策的追い貸しにより膨張を続けた疑い濃厚である。 このような資金使途でしかも借り手は政府だけという状態を持続できるはずもない。しかも、調達金利の本格上昇局面への備えも課題である。貸出金利息と経費 のバランスから判断して、大半の金融機関にとり、リストラだけで済む問題とは思えない。収益率向上と多角化が不可欠であり、そのためには、投資対象の選定 とリスク配分の決定が急務である。

ここで、金融機関による、投信をはじめとするポートフォリオ商品活用の余地について検討してみよう。鍵はセグメント別にビジネスリスクを把握すること、そ の上で市場リスクを建設的に取り込むことである。

有価証券報告書等から、例えば銀行業については、大まかに融資、トレーディング、不動産その他、の3セグメントに分けたとする。融資に関しては、ネット利 息、つまり貸出金利息をはじめとする資金運用収益と預金利息など資金調達費用との差額から貸倒引当金と経費を差し引いたものを期間損益とする。同様に、有 価証券絡みのインカム、キャピタル損益はトレーディング、その他の資産取引関連項目は不動産その他に分類する。これらセグメント別損益の対使用資本比率を 各年ごとに求め、これを時系列で平均したものをリターン、その標準偏差をリスクと定義する。言うまでもなく、経費及び使用資本の配賦は重要な経営データで あり、これを外部推定だけで把握するだけでは不十分であろう。

では市場リスクの取り込みはいかに行うか。一旦セグメント別リスクが推定できれば、金融資産との対比を行ってみる必要がある。融資業務のリスクが年率1% である場合、これに同15%程度の国内株式ポートフォリオを目分量で組入れることは不適当である。だが、融資業務と国内株式ポートフォリオのリスクが等量 となるように組入れウェイトを調整したらどうか。株式と融資業務の相互補完・代替関係、つまり共分散にもよるが、本業と調和した形で事業ポートフォリオを 分散することが可能となろう。リスク年率3%の国内債券、同10%強の外国株式、外国債券(いずれも円ヘッジ無し)でも同じ手法で組入れる(あるいは過大 保有を減額する)ことにより、分散対象を代表的な伝統的資産4タイプにまで拡大できる。しかも、アクティブ、パッシブいずれを選択しようとも、通常、ポー トフォリオは十分分散されている上、高い透明性を確保できる。あくまでバックテスト結果だが、分散による事業ポートフォリオのスムージング効果は大きい (下図参照)。

金融資産取り入れによる事業ポートフォリオスムージングの例
(累積パフォーマンス)
いわゆるオルタナティブ投資に関しても、上記と同様の手法で調和的分散を達成することができる。ただし、透明性確保には留意したい。これは近く公表される 新BIS基準により法外なペナルティを課されるのを避けるためにも重要なポイントである。

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