米国企業改革法の対応について

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2005年12月19日

  • 古井 芳美
企業に対し開示情報の適確性を求める米国企業改革法(以下、SOX法)は2002年に成立し、2004年から適用されはじめている。当初、「コーポレート・ガバナンスとは何であるか」、「コーポレート・ガバナンスを導入するにはどうすればよいか」といった基礎的な内容が関心の中心となっていた。しかし、今ではSOX法の対応を済ませた大企業を中心にその過程について評価が進んできている。

なかでも、投資に対し期待される結果が得られないといった問題が浮かび上がっている。事実、SOX法対応による投資額は拡大しており、米国調査会社ガートナーは第404条の内部統制を確保する費用が2004年度には予測額の2倍以上掛かったとした。この理由として、投資額の目安が無く、コンプライアンス対応のコンサルティング費用が増加したことが挙げられる。こうしたコンサルティング企業の需要は大きく、「コンプライアンス業界」と呼ばれる新たな事業分野が出現している程である。

また、小資本の公開企業や海外企業では必要な対応資源を工面できないとして法の適用時期が延期された。以上のようにSOX法に対する消極的な意見が散見される。

しかし、企業が対応すべき規制は今後もプライバシーや財務会計システムに関わる内容が中心となることが予想される。これを踏まえると、SOX法に限定せず包括的なコンプライアンス対応に取り組む必要があろう。四大会計事務所の調査結果によると、SOX法対応をピークにその数年後にはコンプライアンス対応費用が半減するとされているが、これを機会に将来の規制にも対処できるような枠組みを整備しておくことが理想である。

以上より、2008年に導入が見込まれる日本版SOX法に対応する場合、新たに出される規制毎にプロジェクトを立ち上げ個別に対応するのではなく、変更を最小限に抑えSOX法以外のコンプライアンスにも柔軟に対応できる仕組みを構築することが望ましい。

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