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中国:新たな「世界の工場」に対応した事業戦略の必要性

2005年12月07日

アジアコンサルティング部 シニアコンサルタント 張 暁光

“Made In China”の製品が世界市場の隅々まで流れ込むなか、2001年後半より再開した第三回対中投資ブームを通じて、「世界の工場」としての中国の位置付けがが定着したかに見える。ここ数年にわたる高水準のGDP成長率、海外からの巨額直接投資、堅調な貿易輸出の推移は、中国のポジションを端的に物語っている。更に具体的に言えば、アパレル・繊維、白物家電や電子製品などの分野における一部分製品の生産量は、既に実質的に世界トップの座を占めた。このような一連の動きがその見方の裏づけになったと言えよう。

但し「世界の工場」とは少なくとも、(1)世界における高い工業製品シェア、(2)健全な工業生産体系と多様化された製品群、(3)技術開発と産業発展におけるリーダシップの三つの要素を備えた地位を指すものと考えられる。しかし中国製造業(一部の外資系を除く)の実態を見ると、「三低一高」(低賃金、低生産性、低付加価値、高エネルギー消耗)という産業構造の問題を抱えたままの状況にある。特に安価な人件費に依る部分が多く、一般製造業における優位性は、労働集約型のローテク・低付加価値の大量生産製品に集約され、一部のハイテク類の製品分野でも、OEM・ODMといったサポーディング機能を提供するに留まっており、まだまだ「世界の工場」とは言い切れない。

これまで「世界の工場」と呼ばれたイギリス、米国、日本は、いずれも設備投資や技術開発を基本的に自国主導で進めてきた。これに対し、現在の中国における工業化は、先進国の産業構造調整の流れを受けた、多国籍企業による国際的な分業体制の一端を担う存在であり、「世界の工場」というよりも、世界の工場の1ラインとの認識が妥当であろう。

これまでの国際分業体制下での産業移転の受け入れは、中国の貿易拡大、GDP成長、余剰人員の雇用確保に大きな役割を果たしたと同時に、先進国の産業構造調整プロセスにおいても、大きな調整弁を提供してきたと考えられる。しかし、近年の電力・石油不足、資源欠乏、工業汚染の拡大などに象徴されるように、従来型の工業化路線に限界が見え始めており、中国は新たな「世界の工場」への方向転換を迫られている。

近年、中国では産業高度化を志向した政策誘導を強めている。一方で、外資系企業もスケール・メリットの優位性に加え、生産開発技術での優位性確保を目的に、中国で研究開発(R&Dセンター)を設立する動きが活発化している。中国における日系企業は、香港、台湾、韓国系企業、欧米企業、中国企業など、多様なのライバルを相手に厳しい競争を展開しているが、自社の強みを活かした技術集約型・環境保全型の事業戦略を早期に構築することで、将来の競争優位性を確保していくべきであろう。具体的には、日系企業が得意分野とする産業の高度化、省エネルギー型への産業構造の転換を、新たなビジネスチャンスと捉えた展開が求められよう。

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