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中東欧諸国からの移民流出

2005年12月06日

岡田 恭二

昨年5月のEUの中東欧諸国への拡大から約1年半が過ぎた。EUの拡大によって、所得格差を背景に、新規加盟国から既存加盟国への労働力の移動が予想された。大規模な移動になるとの見方もあって、多くの既存加盟国は、自国の高水準の失業率を理由に、受け入れ枠の設定など流入を制限した。

そうした中、経済が順調であった英国は、移民の受け入れに比較的寛大な姿勢をみせた。そのため、新規加盟国から職を求めて多くの若者が英国を訪れている。2004年に他のEU諸国から英国へ流入した移民は、前年に比べて83%増加し、11.7万人に達した。中東欧諸国からの労働許可申請は昨年5月からの1年間で20万件を上回り、そのペースは現在も鈍化していない。ポーランドやリトアニア、スロバキア、ラトビアなどからの申請が多く、とくにポーランドは全体の半数を上回っている。
 
もっとも、インドやパキスタンを中心とした英連邦諸国から英国への移民が21.9万人と多く、全体(49.4万人)の44%を占めている。英国から海外への移住者を控除したネットの流入は全体で22.2万人となっている。人口6000万人弱の英国全体からみれば、最近増加傾向にあるとはいえ、マクロ的には大きなインパクトを与えることはなかろう。ただ、景気の拡大ペースが今以上に鈍化した局面では、移民の増加に対する労働者等の反発が強まる可能性がある。移民の増加により社会的な不安定性が強まるなど、社会的なコストが今後さらに問題とされる局面も現れよう。

しかし、中東欧諸国に与える影響がより心配であろう。多くの中東欧諸国では、人口の自然減がみられ、海外への移民が増加すれば、人口の減少スピードがさらに加速することになる。この1年間にポーランド等から提出された英国の労働許可申請者数は、それら諸国の15-49才人口の0.6~1.8%に達すると推計される。比較的教育水準の高い申請者も多いとみられ、中長期的にそれら諸国の経済に与える影響が懸念される。

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