急がれる医療の情報化
2005年11月09日
2000年に政府から発表された「e-japan構想」(5年以内に世界最先端のIT国家になることを目指す)を受け、厚生労働省は2001年12月に「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」を発表。2006年度までに電子カルテを400床以上の病院、及び診療所(入院ベッドが20床未満)の6割以上に普及させる目標を掲げた。
しかし、厚生労働省によれば、2003年度末現在の電子カルテの普及率は、400床以上の病院で12%、400床未満の病院で1%、診療所で3%に過ぎない。病院や診療所にとって投資効果があまり期待できないからである。
患者の待ち時間短縮による生産性の向上やコスト削減を図るには、電子カルテと同時にオ-ダリングシステムを導入することが必要となる。オ-ダリングシステムは、検査伝票や処方箋などの医師のオ-ダ-をコンピュ-タに入力することで、関連部門への伝達や医事会計への反映を行ない書類運搬作業などの削減を図る。両システムの導入には、入院ベッド1床当り50~100万円程度の費用がかかるうえ、病院の規模が小さくなるほど投資効果も小さくなる。
個々の病院等に導入した電子カルテが発展し、医療機関等で診療情報の共有化が図れれば、メリットは大きい。診療情報デ-タベ-スを利用することで治療成果の向上が期待できるうえ、患者への分かりやすい情報提供が可能になる。また、様々な治療方法や薬の費用対効果を分析すると共に、異なる医療機関での重複受診を無くすことなど、医療費の抑制も図れよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
「内巻」(破滅的競争)に巻き込まれる中国自動車業界
2025年06月11日