ロシアが面白い

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2005年11月07日

  • 佐藤 清一郎

11月20日、ロシアのプーチン大統領が来日予定である。今年は、1854年にロシア帝国海軍のプチャーチン提督率いる「ディアナ号」が下田に来航し、翌年の1855年に江戸幕府との間で日魯通好条約を調印してから150年目にあたる。日露修好150周年を記念したイベントも多数行われている。以前と比べると、日本人は、ロシア関連情報に接する機会が確実に増えているのではないか。そのロシアが、今、結構凄いことになっている。

高成長と言うと、つい中国にばかりに目を奪われがちだが、ロシアも、1998年の金融危機後、経済好調を持続している。成長率は、1999年、前年比+6.3%と、前年の同-5.3%からプラス転換、2000年には同+10%の高成長を達成。2000年~2004年の年平均成長率は+6.9%である(この間、先進国は同+2.4%成長)。株価は上昇基調で、金融危機後、38.53まで売り込まれたRTS株価指数は、現在、900周辺の動きとなっている。また、長期債の格付けも引き上げ方向で、2005年10月現在、ロシアの自国通貨建てソブリン債格付けは、ムーディーズ社がBaa3、S&P社がBBB/安定的としている。

こうした中、海外からの直接投資は増加方向で、日本からはトヨタが、今年5月、ロシア第2の都市サンクトぺテルブルク(人口約500万人)に新工場を建設した(ロシア第1の都市は、もちろんモスクワで人口約1000万人)。6月に行われた起工式では、ロシア政府から、プーチン大統領、クレバノフ北西連邦管区全権代表、サンクトペテルブルク市マトビエンコ知事、日本側から日露賢人会議座長である森前内閣総理大臣、野村在ロシア日本国大使、欧州復興開発銀行(EBRD)から、ルミエール総裁らが出席し、トヨタ進出に対する関係者の期待の大きさをうかがわせた。新工場は2007年12月稼動予定で、生産車種はカムリ、生産台数は当面年間2万台程度だが、最終的には、5万台程度を目指す。

ロシア経済好調の大きな要因は、中国を筆頭に新興国の力強い経済成長を背景に、原油をはじめとした資源価格の上昇が続いていることである。ロシアは、サウジアラビアと並んで、世界屈指の産油国であるばかりでなく、天然ガス、鉄鉱石なども世界上位にランクされている。ロシアは、現在の世界経済拡大局面にあっては、主に、資源供給の役割を担っているのである。問題は、新興国の経済成長が持続するかどうかだが、これに関しては、以前と比べ、先進国から新興国への直接投資など資本の流れが容易になった結果、新興国は、最新技術を享受しやすい環境になっているため、持続的成長の可能性は高まっていると言える。そのため、新興国の経済成長の動きは、そう簡単には、崩れないと判断される。すると、資源供給国であるロシアは経済好調持続となる。

ロシアに関して、大量資源保有国であることに加え、2点強調しておきたい。第1は、1998年の金融危機を契機に、経済体質が強化されていることである。社会主義体制崩壊後1990年代前半に歩んだ資本主義の制度的模倣は、金融危機という形で幕をおろし、その教訓を下に、実体面からのアプローチによる市場経済の確立という方向を歩んでいる。そのため、経済ショックへの対応力は、金融危機以前より高まっている。第2は、国際社会との関わりである。今後、WTOへの加盟やG7メンバーへの正式加盟が予定されている(来年2月にはロシアでG8開催)他、隣国とのエネルギー関連パイプラインプロジェクトが多数存在している。国際社会での存在感は増す方向だ。

以上のように見ると、ロシアは、結構面白いかもしれない。文学、音楽、クラシックバレー、オペラ、スポーツなど文化面では、世界トップ水準の優れた業績を持つロシアだが、今後は、経済面でも目立った動きがでてくるかもしれない。
 


 

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