M&Aと和の文化

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2005年10月19日

  • 間所 健司

平成十七年度に会社法が大幅に改正された。M&A関連については、これまで株式交換・移転、会社分割制度など、さまざまな改正が行なわれてきた。今回の改正の大きな変更点は、当事会社の株式以外を対象とするM&Aが可能となったことである(ただし、この部分については施行が先送りされている。)。この改正で、外資系企業や投資ファンド等によるM&Aが増加するのではないか、との観測もある。

わが国が、M&A、特に「敵対的」M&Aが活発に行なわれるような社会になるのであろうか。聖徳太子が定めた十七条の憲法の一条に「和を貴び」とある。また、「和をもって日本となす」(角川文庫、ロバート・ホワイティング著)では、野球を通じて日本とアメリカの文化を比較している。わが国の文化的傾向として、「和」が尊重されていることが分かる。ここ数年、ネット系企業がM&Aによりその業容を拡大してきているが、そのほとんどは「友好的」M&Aではないかと思われる。では、わが国伝統の「和」と「敵対的」M&Aは相容れないものなのか。

ここまで、敵対的と言ってきたが、「敵」とは誰に対するものであるのか。一般には経営陣と認識されよう。多くの報道の中でも経営陣のコメントは多数出ているが、株主や従業員の意見はあまり聞かれない。その一方で、そのM&Aが多数の株主から賛意を得られず、従業員が職務意欲をなくすものであれば成功はおぼつかない。

とはいえ、「和」の国であるわが国に、敵対的M&Aが登場したことは、日本型資本主義が新たな転換点を迎えたものと言える。繰り返しになるが、相手側の株主、従業員を味方につけられるような「和」の提案が、敵対的M&Aを成功させる第一の条件になっていると言えよう。

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