最近、テレビをみてますか

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2005年10月14日

  • 山下 真一

先日、風呂上りに一杯やりながらテレビを見ていたら、かつてのアイドル歌手達が登場して、今となっては懐メロである彼女達の曲を歌っていた。昔、父親が「最近の曲はさっぱり分からん」とこぼしていたのを思い出し、最近のヒット曲よりも20年前の曲に心地良さを感じる自分ももうそんな年になったのかと、苦笑した。

そういえば、同じような歌番組は数週間前にも見たばかりだ。懐かしのアニメランキングなんていう番組は毎月のごとく放映している。いまは懐かし物ブームなのだろうか。一方、ゴールデンといわれる時間帯では、いかにして老後に年金をとりっぱぐれないかとか、健康で長生きするためのノウハウなんていう番組ばかり放送されている気がする。どちらにせよ、なんだかテレビ番組から若々しさが失われつつある気がする。

少しほろ酔い気分ながら、想像力をたくましく働かせて、こう考えた。推測できるのは、いま若者向けに番組を制作しても視聴率が取りにくくなりつつあるということである。つまり、いまやテレビ放送を視聴しているのは中高年ばかりなのである。いまどきの若者は携帯電話やインターネットに忙しく、テレビなんてみている暇はなく、あまり興味を示さなくなってきているのである。このように考えると、最近評判になった、インターネット上の掲示板への書き込みをもとにしたテレビドラマが製作されたことは、知られざる隣人の生態を描き出したというよりは、時流に遅れまいと必死にインターネットにすがりつこうとしている既存メディアの必死な姿の表れのような気さえしてくる。

確かに、テレビ広告費はインターネット上の広告費よりもまだ10倍以上大きい。しかし伸び率はネット広告がテレビ広告の1.5倍近いことを考えると、10年もすればそれらの関係は逆転していることは十分にありうる。また、テレビ局のCM枠はもうこれ以上拡大しようがないが、インターネット上ではそれは無限といってもよい。各企業の広告費は限度があることが考えると、広告主がインターネットに移行してゆくことは想像に難くない。

さらに、ネット上のほうが費用対効果を計測しやすく、アフィリエイトのような口コミ販売網が大成功をおさめつつある。未来の消費者である現代の若者に効率的に訴える方法があるならば、よほどの義理がない限りそれを選ばないことはありえない。

従って、早晩、これまでのビジネスモデルの見直しを迫られることは間違いない。既存メディアはネット企業に株を買い占められそうになっても、「公共性」や「視聴者」を盾にとって拒絶反応を示すのではなく、新しい企業形態やビジネスモデルを模索してゆくきっかけととらえてこそ、未来への道が開けてゆくのではないだろうか。

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