石油価格高騰と空理空論の真実
2005年10月05日
石油価格が高騰した1973年の第1次石油ショック、1980年前後の第2次石油ショックの時には日本はインフレになったのに、なぜ現在、インフレにならないのだろうか。
多くのエコノミストは、石油価格高騰はインフレの原因になると言ってきたが、本当の経済学者は、石油価格の高騰はインフレの理由にはならないと、第1次石油ショックのときに、すでに指摘していた。ノーベル賞受賞の経済学者、ミルトン・フリードマンは、石油価格が上昇すれば、人々の石油以外のものに使うお金が減少する。したがって、石油以外のものに対する需要が減少し、それらの価格が下落する。それゆえ、石油価格が高騰しても財サービス一般の価格は上がらない。すなわち、インフレにはならないと指摘していた。もちろん、本当にインフレ率がゼロになるためにはこまごました条件がいる。しかし、こまごました条件が満たされなくても、石油価格高騰がインフレの主要な要因にはならないと指摘していた。
30年以上も前、私がこの理屈を聞いたときには、すぐさま空理空論だと思った。現に、石油価格の高騰とともに日本の物価は急上昇している。石油が上がっても、他のものの価格が下がるからインフレにはならないなどということがあるものかと思ったのである。
しかし、現在、石油価格が2倍に上がっても、日本はインフレになっていない。この空理空論は正しかったとしか言いようがない。なぜ空理空論のように思える理屈が正しかったのだろうか。この理屈が、常識に囚われず、需要が減れば価格が下がるという経済学のもっとも基本的法則に忠実であったからだろう。経済学の空理空論をバカにしないで、もっと勉強しておけば良かったと、今になって思っている。
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