女性起業家の時代が到来

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2005年09月02日

  • 鈴江 栄二

女性起業家が注目される時代が到来しようとしている。アメリカでは一足先に1980年代から女性起業家の成功事例が増加し、最近では女性が50%超を保有する企業が全米で1,060万社、同じく未上場企業では全体の48%という報告(05年、米・女性事業研究センター)もある。上場企業では売上高が13億ドルに達するPCコネクション、株式時価総額で44億ドルのリズ・クレイボーンおよび13億ドル近辺のマザーズ・ワークなどが先行する事例であろう。

日本では、個人事業主を含めると20数%が女性経営者といわれるが、中小企業だと数%、上場企業は1%未満にすぎない。しかし90年代には上場を果たす女性起業家が目立って増加してきた。さらに00年代に入り増加ペースが一段と加速してきている。01年上場のインデックスの時価総額は3,000億円、今年上場したばかりのディー・エヌ・エーの時価総額は1,300億円前後とアメリカの先行企業に比べ遜色ない。今後女性起業家の比率はアメリカを追い掛けるように上昇し、特に大企業の比率がこれまで低かった分、顕著な拡大を見せよう。

その背景は「女性の社会進出」と「起業家の育成」という2つの社会潮流が合流を始めたことにある。男女雇用機会均等法の施行以来、「自分らしい生き方をしたい」「社会に役立ちたい」「能力を生かし収入を得たい」「家庭と仕事を両立したい」といった思いを強く持つ女性が増加しているといわれる。こうした思いや夢を実現する主要な手段が起業家の道といえる。また、起業家を目指す人たちは男女を問わずこうした思いや夢を持ち続けるという共通した特徴がある。女性の社会進出への思いは、起業家予備軍の思いと本質は同じものといえる。さらに、成功した起業家の特徴を見ても、「事業を通じて社会にどう貢献するか」「既成概念を変えて社会を変革したい」などの思い(理念と言い換えられる)がやはり重要な共通点である。ポイントはその思いをいかに強く長く持ち続けられるかどうかだといわれる。男女問わず成功するポテンシャルが十分あるといえよう。

こうした個人の価値観の変化と並行して社会ニーズの側面からも女性起業家への期待が高まっている。少子高齢化時代を迎えて女性は貴重な労働人材であり、特に消費が多様化するなかで女性の感性を生かせる新事業の開拓、知識社会における知的潜在力の活用など重要な役割を担うことができる。また起業家の育成という観点においても、フロントランナー型社会の構築や知的資産の活用が重要となった今日の新産業の担い手として女性起業家の役割は増すだろう。

このように女性の思いを実現する主要な手段として、かつその知的潜在能力を活用し新産業を創出する担い手としての女性起業家の活躍が、今後ますます顕著となってくることが予想される。

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