相次いで発表されたMBOの狙い

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2005年08月29日

  • 岡田 良行

このところ、株式公開企業のMBO実施が立て続けに発表された。MBO(マネジメントバイアウト)は、M&Aの一種であり、経営陣や経営幹部、従業員が、銀行や投資ファンドなどからの資金提供により、自社や、子会社、特定の事業などを買収する手法である。

2002年頃から日本でも採用されてきており、親会社からの子会社の独立が目的であったり、企業がリストラクチャリングに取り組む過程で、集中と選択を図るための戦略のひとつとして使われてきた。敵対的買収に比べて、日本的風土に合っているとも言われている。

7月25日に発表されたワールド(銘柄コード3596)に続いて、8月22日に発表されたポッカコーポレーション(2592)のMBOも、ともに株式非公開を目的としており、順調に進めば上場廃止となる。

過去の株価平均(ワールド6か月、ポッカコーポレーション1ヶ月)に20%以上のプレミアムを乗せた価格で買付別会社による公開買付を行ない、買付会社の100%子会社とする計画となっている。

今回MBOに踏み切った2社は消費者に対し、直接的に事業展開をしている会社である。めまぐるしく変化する消費者嗜好のなか、価格競争の激化、製品サイクルの短縮化などに対応するための、新製品開発、事業展開を常に求められてきた。今回の決断は、敵対的買収からの防衛策であるとともに、効果的な戦略構築において、公開企業に求められる迅速な情報開示を回避できる点が競争上優位であるとの判断が働いていたと考えられる。競争上、経営のいわゆる「ブラックボックス化」を目的とするMBOを今後検討する企業が増加する可能性は高い。アナリストにとって、優良企業が株式市場から去ることは寂しい限りであるが、どのような戦略で業界競争を乗り切るかという点での興味は大きい。

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