TOPIX浮動株化と財務の意思決定
2005年08月18日
TOPIXが浮動株比率を反映することにより、TOPIXの銘柄構成ウエイトは変化する。そのためTOPIXファンドの調整売買が発生するが、それに伴う個別銘柄の株価変動がTOPIXファンドの運用者をはじめとした投資家の大きな関心事項だろう。
東証は以下の3つの施策によって、TOPIXファンドの調整売買の集中による個別銘柄の株価の急激な変動を緩和しようとしている。
(1)浮動株比率の反映は、3回に分けて段階的に実施する。
(2)浮動株比率の反映に先駆け、浮動株指数「参考東証株価指数」を発表する。
(3)浮動株比率の反映に合わせて、従来型指数「旧東証株価指数」を発表する。
しかし、このような緩和策を取っても、TOPIXファンドの調整売買は、浮動株比率が相対的に高い銘柄では株価の上昇要因となり、浮動株比率が相対的に低い銘柄では株価の低下要因になることに変わりはない。
TOPIXファンドの調整売買が株価に与える影響が大きいのは、浮動株移行までの期間といえるだろう。しかし、今後も継続的にTOPIXの浮動株比率は見直され(決算期に応じた年一回の定期見直しと、第三者割当増資や株式移転等に伴う臨時見直し)、その度に調整売買は発生する。株価に与える影響が大きいか否かという議論はさておき、これまでと比べて、浮動株比率の変化が「構造的に」各銘柄の株価に影響するようになったといえるだろう。
昨今のM&Aの活発化により、企業の財務担当者は株主構成をどうするかといった問題に直面しているが、その一方で、株主構成が浮動株比率という指標を通して、株価に「構造的に」影響するようになる。浮動株比率の変化が株価に与える影響は、他の財務の意思決定のインパクトと比較すれば軽微であるかもしれない。ただ、あくまでその影響は考慮した上で、財務の意思決定を行うことが望ましいといえるだろう。
(※1)一部の株主に固定的に保有されるために市場で流通する可能性が低い株式を除いた、実際に市場で流通する可能性がある株式を浮動株と呼ぶ。TOPIXをその浮動株ベースの時価総額で計算することがTOPIXの浮動株化である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2021年01月15日
ポストコロナの人事制度を考える視点
~働く人の意識変化をどう捉えるか~
-
2021年01月14日
2020年11月機械受注
船電除く民需は市場予想に反し2ヶ月連続で増加、回復基調が強まる
-
2021年01月14日
アメリカ経済グラフポケット(2021年1月号)
2021年1月12日発表分までの主要経済指標
-
2021年01月13日
震災10年、被災地域から読み解くこれからの復興・防災・減災の在り方
『大和総研調査季報』 2021年新春号(Vol.41)掲載
-
2021年01月14日
共通点が多い「コロナ対策」と「脱炭素政策」
よく読まれているコラム
-
2020年10月19日
コロナの影響、企業はいつまで続くとみているのか
-
2015年03月02日
宝くじは「連番」と「バラ」どっちがお得?
考えれば考えるほど買いたくなる不思議
-
2020年10月29日
コロナ禍で関心が高まるベーシックインカム、導入の是非と可否
-
2006年12月14日
『さおだけ屋は、なぜ潰れないのか』で解決するものは?
-
2018年10月09日
今年から、夫婦とも正社員でも配偶者特別控除の対象になるかも?
配偶者特別控除の変質