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TOPIX浮動株化と財務の意思決定

2005年08月18日

井上 学

今年の市場に関する大きなニュースの一つに、TOPIXの浮動株化(※1)を挙げることができる。今年10月末からTOPIXの計算に浮動株比率を段階的に反映し、来年6月末には完全に浮動株ベースのTOPIXに移行する。現行のTOPIXでは、TOPIXファンドが実際に市場で取引できない投資ウエイトで資金を配分することになり、需給の不一致が生じる。TOPIXの浮動株化はこのような需給面の正常化を目的としているのである。

TOPIXが浮動株比率を反映することにより、TOPIXの銘柄構成ウエイトは変化する。そのためTOPIXファンドの調整売買が発生するが、それに伴う個別銘柄の株価変動がTOPIXファンドの運用者をはじめとした投資家の大きな関心事項だろう。

東証は以下の3つの施策によって、TOPIXファンドの調整売買の集中による個別銘柄の株価の急激な変動を緩和しようとしている。

 (1)浮動株比率の反映は、3回に分けて段階的に実施する。
 (2)浮動株比率の反映に先駆け、浮動株指数「参考東証株価指数」を発表する。
 (3)浮動株比率の反映に合わせて、従来型指数「旧東証株価指数」を発表する。

しかし、このような緩和策を取っても、TOPIXファンドの調整売買は、浮動株比率が相対的に高い銘柄では株価の上昇要因となり、浮動株比率が相対的に低い銘柄では株価の低下要因になることに変わりはない。

TOPIXファンドの調整売買が株価に与える影響が大きいのは、浮動株移行までの期間といえるだろう。しかし、今後も継続的にTOPIXの浮動株比率は見直され(決算期に応じた年一回の定期見直しと、第三者割当増資や株式移転等に伴う臨時見直し)、その度に調整売買は発生する。株価に与える影響が大きいか否かという議論はさておき、これまでと比べて、浮動株比率の変化が「構造的に」各銘柄の株価に影響するようになったといえるだろう。

昨今のM&Aの活発化により、企業の財務担当者は株主構成をどうするかといった問題に直面しているが、その一方で、株主構成が浮動株比率という指標を通して、株価に「構造的に」影響するようになる。浮動株比率の変化が株価に与える影響は、他の財務の意思決定のインパクトと比較すれば軽微であるかもしれない。ただ、あくまでその影響は考慮した上で、財務の意思決定を行うことが望ましいといえるだろう。

(※1)一部の株主に固定的に保有されるために市場で流通する可能性が低い株式を除いた、実際に市場で流通する可能性がある株式を浮動株と呼ぶ。TOPIXをその浮動株ベースの時価総額で計算することがTOPIXの浮動株化である。

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