活性化する大学発ベンチャーのインキュベーション活動
2005年08月15日
大学発ベンチャー向けのインキュベーション施設(※1)の設置が進んでいる。日本経済新聞社の調査(2004年11月実施)によると、回答のあった全国の大学408校のうち47校がインキュベーション施設を既に開設している。前年度の調査時と比べると約2倍に増加したことになる。そのほか、開設計画がある大学(12校)や将来開設したいと回答した大学(95校)も多く、今後もインキュベーション施設の開設は増加を続けると考えられる。
文部科学省や経済産業省などが施設建設を支援している。文科省の関連では、00年度の第1次補正予算で3つの大学のキャンパス内にインキュベーション施設を建設する施策が先駆けとなった。その後、第2次補正予算により10大学が建設リストに加わった。一方、経産省の関連では、中小企業基盤整備機構が建設予算を拠出する形で、大学のキャンパス内あるいは隣接地に設立するインキュベーション施設「大学連携型起業家育成施設」の整備が行われている。
一部の私立や公立では、独自の予算でインキュベーション活動を展開する大学もある。例えば、早稲田大学では、系列の早稲田実業高校が移転した跡地に30室程度のスペースを早大発ベンチャー向けに用意している。施設や設備の提供だけでなく、さまざまな専門分野のスキルを持つインキュベーターマネージャーが経営的な支援も行っている。
大学発ベンチャー100社の株式上場を目指す
経産省の調査によると、05年3月末時点で日本の大学から起業されたベンチャー企業の総数は1,112社に達した。01年に提唱された「新市場・雇用創出に向けた重点プラン(通称:平沼プラン)」の目標であった1,000社を大きく上回る結果となった。設立企業数による大学別ランキングでは、旧帝国大学や早大・慶大などの有力大学が上位を占める。前回調査まで最上位であった早大を上回り、東京大学が初めて第1位にランクされた。
経産省は2010年までに大学発ベンチャー100社の株式上場を目指す目標を掲げている。支援者のネットワーク機能の強化や人材のマッチング機能の拡充などを通じて、大学発ベンチャーの成長を促進していく方針である。
大学発ベンチャーのうちインキュベーション施設に入居するのは一部に限られるとはいえ、その立ち上げ期を支援する意義は大きい。同施設がベンチャー経営に関連する情報交流の拠点になることも期待される。各大学で起業家精神を醸成する基盤として、今後一段とその役割を高めていくと予想される。
(※1)英語のincubate(卵を抱く・かえすなどの意味)から派生した用語で、創業間もないベンチャー企業に事業を本格的に立ち上げるためのスペースを提供する。
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