郵便局での投信窓販の将来性

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2005年08月12日

  • 壁谷 洋和

いよいよ10月3日から郵便局での投信窓販がスタートする。先行する銀行窓販が目覚しい成果を挙げているだけに、郵便局窓販の将来性に寄せられる期待も大きい。開始当初は全国の普通郵便局を中心に575局での取扱いが予定されている。開始から5年後には、取扱い郵便局が1,500局超まで拡大される見通しで、全国に約1,300存在する普通郵便局の大半で投信が購入できるようになると予想される。

極めてリスクに敏感な個人資金を扱う郵便局で、実際にどのような投信が販売されるかは非常に興味深いが、まもなくその結論は出る。元本割れのリスクが比較的小さい商品として、郵政公社が運用機関に対して公募したのは、(1)日経225インデックスファンド、(2)TOPIXインデックス+αファンド、(3)グローバルバランスファンドの3タイプの投信である。当初はそれぞれのタイプから1つずつを選び出し、合計3本のラインナップで郵便局での投信窓販が開始されることになっている。

6月中旬から始まった商品の選定作業は、7月中に運用会社からの応募が締め切られ、8月下旬にも最終決定が下される予定である。日経225インデックスファンドには9社、TOPIXインデックス+αファンドには14社、さらにグローバルバランスファンドには8社からの申し込みがあったと伝えられている。運用会社にとって将来的には100億円単位のビジネスにつながる可能性があるだけに、どの商品が選ばれるかは運用会社の収益チャンスという観点からも注目される。

郵便局窓販の将来的な見通しとして郵政公社が掲げるのは、初年度800億円、2006年度2,000億円、2007年度3,500億円、2010年度1兆5,000億円の販売残高目標である。また、2006年度中にはインターネットを通じた販売を開始することも検討されている。郵政公社による販売目標は、かなり保守的な印象を受けるが、銀行窓販との比較で見た場合には、どの程度の期待を寄せることができるだろうか。

1998年12月に始まった銀行での投信窓販は、足元で公募型株式投信の残高が、およそ16兆円まで積み上がる。公募型株式投信全体の残高が約32兆円であるため、銀行窓販による残高は開始から6年半で全体の半分を占める規模にまで成長したことになる。2006年3月末時点での国内銀行における個人の預金残高は、約330兆円。それに対する公募型株式投信の銀行窓販残高は、約5%と計算される。一方で郵便貯金の残高は、6月末時点で211兆円存在する。銀行窓販並みに郵便局窓販が拡大すれば、残高は10兆円程度まで積み上がる可能性もある。

もちろん、現在の銀行での投信窓販が外債型やリスク限定型が中心である点は無視できない。純粋に株式に投資するタイプの投信は、見た目の数字ほど大きくはなく、需給改善効果が限定的となっているのが実情だ。ただ、それも中長期の株価回復によってクリアされ得る問題と捉えられる。足元で12,000円台を回復する日経平均株価が、さらに安定的に上昇するトレンドが確認されれば、銀行窓販での純粋な株式投信の残高は増えるであろうし、郵便局窓販も同様に残高を積み上げることになろう。今後数年間で郵便局での投信窓販に兆円単位の資金が流入してくることも決して非現実的な仮定ではない。

それを確実なものとするためには、相場環境の改善に加えて、取扱い商品数および郵便局数の拡充が必要不可欠であろう。銀行窓販がここまで増えてきたのも、とりわけ販売チャネルの拡大によるところが大きい。都銀・地銀・信託銀の店舗数は全国におよそ14,000店舗存在し、今ではその多くが投信の販売を行っていると見られる。

郵便局の展開は簡易郵便局まで含めれば、全国におよそ25,000の店舗がある。当初の窓口での取扱いは、そのうちの575局だけであるため、物足りなさは否めない。投信販売の専門知識を持つ職員数との兼ね合いもあり、その数を一気に増やすことは難しいかも知れないが、将来的な課題としては、全国に19,000ほど存在する特定郵便局への取扱い拡大という問題が残る。

いずれにしても、これまでは“聖地”とされてきた郵便局に投信の販路が広がることの意義は大きい。短期的なインパクトはともかくとして、中長期的で郵便局窓販が個人資金を取り込むパイプ役となることも十分期待できる。それは銀行窓販、変額年金保険、401kと並んで、投信市場発展の支援材料と位置付けられるであろう。

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