今後も注目される地方行財政改革

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2005年07月21日

  • 星野 菜穂子

ここ数年、骨太の方針の大きな注目点の一つは三位一体改革であったが、今年に限っては例年の盛り上がりを欠いた。というのも、昨秋の「政府・与党合意」によって平成18年度までの改革の全体像が示されていたためである。但し、問題が全て解決されているわけではない。3兆円の税源移譲の方法こそ明確になっているが、「政府・与党合意」で先送りされた、義務教育費国庫負担金、生活保護費負担金・児童扶養手当負担金、施設費の取り扱い等、実行段階での課題は残されている。また、地方交付税改革の行方も不透明である。さらには、各種新聞報道でも伝えられているとおり、地方側は改革期間内の三位一体改革が十分との認識は持っておらず、第二期の改革が必要とする声は多い。これらを考えれば、三位一体改革を中心とする地方財政改革は、改革期間内の着実な実施はもとより、中期的にもみていくべき課題といえる。

三位一体改革以外でも、地方行財政改革を巡っては、中期地方財政ビジョンの策定、公務員の総人件費改革等々、注目される点は多い。中期地方財政ビジョン策定は、地方財政への予見可能性を高め、地方が「経営感覚を発揮して行財政運営」を行うことに資するものと期待される。また、公務員の総人件費改革は、純減目標を掲げると同時に、新地方行革指針により、団体間で比較可能な財政情報や給与情報を開示することで、改革を後押しするというものになっている。さらに、その範囲は、地方公営企業、地方公社等にも及ぶことで公的部門全体の見直しが図られている。その最終的な目標である「小さな政府」が、果たして地方分権に沿うものかどうかはともかくとして、取り組みの方向性は、従来、透明性に欠けていた公的部門全体の財政状況等を明るみにするという意味でも注目に値し、徹底した情報開示は財政健全化にも資するものとなるだろう

平成18年度には、地方債制度が事前協議制に移行し、地方の行財政は、「市場化」「地方分権」「財政健全化」が絡む中で、今まで以上に、自主的な財政運営が求められ、さまざまな立場から注目を集めることになろう。但し、いずれの立場にせよ、日本の地方行財政が複雑な国と地方の関係の中にあること、また基礎的な対人サービスの提供という役割を担っていること等、制度や実態への理解は適切な評価を行う上での前提である。

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