郵政民営化法案の行方と株式市場
2005年07月12日
僅差で衆院を通過した郵政民営化法案は参院での審議に移るが、民主党が廃案を目指していることに加えて、自民党の参院側には反対派が多く、審議の難航が予想される。参院の現在の勢力図をみると、扇議長を除く与野党の議席数は、与党138(自民114、公明24)、野党・無所属103となっている。与野党の議席差が35で、与党から18人が反対票を投じるか、36人が欠席すると、同法案が否決されることになる。
今後のシナリオとして、大きく3つが想定される。
<1>難航するものの、郵政民営化法案が参院で可決・成立するケースである。
<2>参院で否決・廃案となるケースである。この際には、小泉政権は厳しい対応を迫られるが、(1)衆院の解散・総選挙、(2)内閣総辞職、(3)何も行動せず、政権維持、などがあり得よう。おそらくこれまでの小泉首相の言動からいって、(1)の衆院の解散・総選挙の公算大となろう。
<3>参院で否決の可能性が高まり、法案を採決せず、秋の臨時国会に継続審議として、先送りするケースである。小泉首相は今国会で決着をつける意向であるため、可能性としては低いだろう。
現状、上記の<1>~<3>に対して、主観的には、<1>をメインシナリオ、<2>と<3>がサブシナリオ(リスクシナリオ)との位置づけである。今後の情勢次第では、<1>と<2>の逆転があり得なくもない。ただし、下がったとはいっても、小泉政権に対する40数%という支持率の高さや、郵政民営化法案に対する賛成>反対という世論調査、加えて、年内解散・総選挙を考えていない国会議員と、政局への発展に危惧する自民党政治家、などから、<1>をメインシナリオとみている。
企業の経営・財務体質の改善が進み、内需主導の景気再拡大の兆候が見えつつあるなかで、今後予想される政治情勢は株価にとって重石となりそうである。 <1>のメインシナリオ通りになっても、2006年9月の小泉首相の自民総裁任期切れを控えて、ポスト小泉の動きが活発化する。しかし、小泉首相に代わる候補者が見あたらないのが現実である。外交面では悪化している日中問題、内政面では財政構造改革に向けた消費税引上げ問題など、重要課題が控えている。それには強力なリーダーシップを発揮し得る首相が不可欠になる。ポスト小泉次第では、日本株のリスクプレミアムが高まる可能性がある。
(2)のケースの場合、自民党分裂、政界再編に発展するなど、政治情勢の混乱を伴うリスクが高まるだろう。日本株が一時的に売られる可能性が出てこよう。ただし、解散・総選挙の先の政治情勢・勢力図次第では、株価の調整圧力が長期化するリスクをはらむが、政界再編が良い方向に進めば、株価にとっても中長期的にポジティブに効いてこよう。
一方、8月上旬に向けて為替が気になるところ。米FRBがあと数回、利上げを行うとみられ、秋に向けて日米の短期金利格差が拡大し、ドル高・円安地合いと推察される。これに日本の政治情勢不安が重なると、円安に弾みがつく可能性が高くなろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
ネットゼロへの移行に向け、企業のバリューチェーン外での排出削減の取組み(BVCM)は広がるか?
取組むインセンティブをいかに高められるかが鍵
2024年12月05日
-
サステナビリティ情報の保証をめぐる動向
ISSA5000の公表、各国の規制、わが国での検討状況
2024年12月04日
-
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第3版)
様々な物価・賃金指標を用いる案および住民税分離案を検証
2024年12月04日
-
消費データブック(2024/12/3号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2024年12月03日
-
上場廃止と従業員エンゲージメント
2024年12月04日