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注目集める再生医療技術

2005年07月07日

竹内 慈実

最近、韓国ソウル大学や米ピッツバーグ大学などの研究者らが、クローン技術を応用して患者の細胞から胚性幹(ES)細胞(※1)を高い確率で作ることに成功したことが世界中のマスコミで大きく報じられた。なぜこれほどまでにエポックメイキングな出来事として話題を呼んだのだろうか。確かに、ES細胞やクローン技術は、安全性や生命倫理上の課題など、実用化に向けた数々の問題点が依然として残っている。乗り越えなければならないハードルは高くまだ険しい。だが、今回の研究発表は、技術的には、拒絶反応のない、様々な臓器、組織の細胞に育て上げ得ることも現実味を帯びてきたことをはっきり示す出来事であったからである。

再生医療技術にはES細胞のほかに、体内の組織に存在する体性幹細胞を用いる方法がある。実用化という点では、対象者本人自身の細胞が利用できるため、倫理的な問題が少ない点から注目されている。わが国でも患者自身の体性幹細胞を用いた皮膚、軟骨、骨、角膜などの臨床応用に向けた開発が進められている。体性幹細胞を用いた、心筋梗塞の壊死部に対する骨髄細胞移植、急性肝不全における肝細胞移植、パーキンソン病に対する神経幹細胞移植などといった研究も盛んである。

この他、培養頭皮細胞を用いた頭髪再生や、培養繊維芽細胞を用いたシワ取り、脂肪由来幹細胞を用いた乳房再建など、美容整形外科領域の研究・開発も活発化している。病気の治療より、むしろアンチエージングにかかわる分野での応用の方が実用化は早いかもしれない。

現在、わが国では大手企業や関連するバイオベンチャーの実用化に向けた開発競争を活発化する状況が強まっている。また、理化学研究所の発生・再生科学総合研究センターや京都大学再生医科学研究所など、再生医療に特化した研究機関が活発に研究を展開している。日本は国際的にみても再生医療研究のメッカの1つとなっている。

東京大学も第一製薬など6社と共同で東京大学付属病院内に細胞プロセッシングセンターを設立するなど、産学官連携による技術移転の仕組みづくりも進んできている。当然バイオベンチャーも参入している。今後も日本では、多様な再生医療研究シーズの開発競争に名乗り出る国内企業が一層増えていくことだろう。

遺伝子、タンパク質と、バイオビジネスの世界では年を追って注目されるテーマが目まぐるしく変わっている。今年のテーマはさながら再生医療といったところなのであろうか。

(※1)受精卵が胎児になる途中の「胚」から細胞を取り出し人工的に増殖させた細胞。あらゆる身体組織や臓器を形成する細胞に分化・増殖する能力を持つと考えられている。

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