所得課税の見直し-損益通算の制限に要注意-
2005年06月21日
政府の税制調査会は本日21日に、個人所得課税のあり方に関する報告書を決定し、公表する予定である。報告書は、厳しい財政事情を反映し、定率減税の廃止、給与所得控除の縮小、配偶者控除や特定扶養控除等の各種控除の見直し、退職所得の2分の1課税の見直しなど、納税者にとっては厳しい内容となりそうである。
これらの他に、重要な点として挙げられるのは「損益通算の制限」である。政府税調の会長の会見録などを見る限り、不動産所得についてはこれを廃止し、不動産業者以外の個人の場合は雑所得に分類する方向で検討が行われている模様である。不動産所得の損失については、現在は、給与所得などの他の所得との通算が認められている。しかし雑所得に分類された場合は、給与所得などとの通算ができなくなる。その他、一時所得の2分の1課税を廃止し雑所得と一体化する案、現在雑所得とされている年金所得を雑所得と区分して独立の所得として取り扱うといった案も俎上に挙がっている。
雑所得の場合、その損失は他の所得と通算できない。所得区分を整理し雑所得に統合する方法には、損益通算を制限していきたいという考え方が伺える。年金所得を雑所得から区分するのも、年金所得と他の雑所得の損失との通算を認めるべきではないとの考えによるものと思われる。さらに、譲渡所得においては、既に不動産の譲渡損について、他の所得との通算を認めないこととする税制改正が実施済みである。
このような流れを見る限り、今後の金融所得課税一体化の議論でも、税務当局は金融所得間の損益通算を、かなり制限するスタンスで望むことが予想される。しかし、税率を20%に揃えるだけでは、現在10%の税率が適用されている株式投資にとっては単なる課税強化で終わる。金融所得課税一体化に関しては、商品間の取引の代替性が高いこと、リスクを負った投資の促進が国策であること、選択的番号制導入による取引捕捉が予定されていることなども踏まえ、幅広く損益通算を認める方向で見直しが行われることが望まれる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
中国:自動車産業の内巻、国外では強みに
新エネルギー車(NEV)の急発展と自動車輸出の急増
2026年05月18日
-
上場オーナー企業と公開買付制度・大量保有報告制度の見直し
2026年5月1日に大量保有報告書等の提出義務が発生する場合も
2026年05月15日
-
デジタルアイデンティティ・デジタルクレデンシャルをめぐる取組みと実装技術の論点整理(第1部)
デジタルアイデンティティの基本像と、EUDIウォレットにみる制度化・実装動向
2026年05月14日
-
熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 何故、わが国では潜在成長率が低迷しているのか?
高市政権は成長戦略を強化する方針だが、①労働、②資本、③TFP(全要素生産性)という3つの要素をバランス良く底上げする必要
2026年05月13日
-
まちづくりと書いてチームビルディングと読む
2026年05月18日

