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なぜ中国で高級車が売れるのか?

2005年06月20日

肖 敏捷

日本の高度成長の幕開けとなった1955年、通産省が打ち出した「国民車構想」では、エンジン排気量など技術基準のほか、25万円以下という価格基準も満たす車が国民車と定義されていた。大卒の初任給は当時1万2千円だったことから、国民車を買うには約2年分の給料が必要だったことになる。

半世紀後の今日、自動車の生産技術は飛躍的に向上したため、性能と価格の単純な比較にあまり意味はないが、大卒の初任給2年分で買えるのが「国民車」という日本の経験則に基づくと、中国では5万元前後の乗用車が「国民車」に該当するだろう。しかし、直近の乗用車販売統計で推定すれば、価格帯が10万元以下のシェアは31%だが、10万元以上は32%、20万元以上は37%となっている。これを60年代の日本に喩えれば、「パブリカ」級の国民車ではなく、「クラウン」級の高級車が最も売れているということになる。

では、国民の所得水準からすれば「高嶺の花」であるはずの高級車がなぜ売れるのか。まず、国民の所得が公式統計以上に高い可能性が考えられる。例えば、上海市が発表した大学生の平均初任給は1,680元(2004年)だが、外資系企業は平均2,110元前後が相場である。また、「白い猫でも黒い猫でも」という時代が夥しい数の高所得者を生み出したのも実状である。もう一つ、国民ではなく、政府や企業関係者が購入している可能性がある。所有者別乗用車の保有台数は、「私車」約850万台に対し、「公車」は約300万台と推定される。官僚などへの高級車提供は中国だけではないが、問題はその層の厚さである。

公式統計によると、中国の公務員は654万人だが、国有企業の経営者、政府関連団体の職員などの準公務員を含めば、その数は7,000万人、官民比率は1人対18人と推定される。報道によると、2004年に購入、維持費など政府の車関連支出は3,000億元と、財政赤字とほぼ同水準に達したとみられる。国民の利益を最優先する「以人為本」という姿勢を打ち出した胡錦濤政権が、「公用車制度」改革にも乗り出したことから、本格的な「国民車」時代の到来もそう遠くないかもしれない。

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