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ヘッジファンドの衝撃に揺れるドイツ

2005年05月20日

経済調査部 経済調査部長 山崎 加津子

ドイツ証券取引所が大嵐に遭遇している。5月25日の株主総会まで3週間を切った5月9日、臨時監査役会でザイフェルト社長の即時退任が決定された。同時に、ブロイヤー会長も2005年末までに退陣すると発表。大異変の原因となったのは、イギリスのヘッジファンドTCIをリーダー格とする外国人株主グループとの意見対立である。これらの株主は、ザイフェルト&ブロイヤーのコンビが進めていたロンドン証券取引所の買収計画に反対。この計画を撤回させたあとは、買収用資金を株主に還元するよう要求した。ザイフェルト社長は5月3日に2007年までに15億ユーロを株主に還元すると発表したが、TCI側との和解はならなかった。

問題のロンドン取引所買収計画は、ザイフェルト社長、ブロイヤー会長の長年の夢であった。2000年の対等合併提案はスウェーデン取引所から横槍が入ったことを契機に白紙撤回となり、今回の買収提案が2度目の試み。ところが、ドイツの大手投資信託銀行も含め、ドイツ取引所の株主はこの計画を必ずしも支持していなかった。2000年の経験から、ロンドン取引所の会員や株主からの強い反対意見が予想され、買収金額がつり上げられて投資金額に見合った買収効果が得られない懸念が高いと判断されていたのである。

これに対して、ザイフェルト社長は、株主の意見を十分に汲み取らず、またその影響力を過小評価していたようである。株主の意向を顧慮しないまま、強引な買収計画を推し進めようとした社長に対し、株主がNOを突きつけたのが今回の解任劇と考えられる。このできごとは、他の上場会社の経営陣に、株主の意向に対する配慮を持ち、十分な理解を得ることが経営をスムーズに行なう近道という認識を強化させた点で、プラスの影響を持つと予想される。また、ヘッジファンドの影響力の大きさが実感され、ヘッジファンドとの付き合い方に関する議論が急速に盛り上がっている。投資や影響力を制限するべきだという意見もあるが、それでは投資資金がドイツを回避することになるだけで問題解決とはならないという意見もあり、情報開示の強化など現実的な路線が選択される可能性が高いとみられる。

それにしても、ザイフェルト社長は1993年の社長就任以来、ドイツ取引所の近代化を推進し、ドイツに「株式投資文化」を根付かせることに尽力した第一人者である。例えば、電子取引システムの導入、先物取引所ユーレックスの立ち上げを遂行。スイス取引所との合弁会社であるユーレックスは、現在では欧州1位の取引規模を誇り、ドイツ取引所の好業績にも貢献している。また、証券取引関連の法整備を政府に求め、2001年にはドイツ証券取引所の上場も実現した。そのザイフェルト氏が株主によって辞任を余儀なくされたのは、皮肉なめぐり合わせである。

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山崎 加津子

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