風力発電からみた環境問題

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2005年05月18日

  • 星野 和彦

風力発電は、「風の力」で風車を回し、その回転運動を発電機に伝えて電気を起こす発電方法。エネルギ-源が枯渇しない上に、二酸化炭素や有害物質を排出しない。環境に優れる一方で、発電コストが高いことや、風の強さによって発電量の変動が大きいことなどのデメッリトがある。

国内の風力発電設備は、90年代後半より急速に増加している。2003年度末の風力発電設備は約700MW。未完成の設備を含めれば、電力会社は同年度末で、約1,300 MWの風力発電設備から電力を購入する契約を結んでいる。NEDOの補助金(97年度から実施、補助率1/3以内)や、98年度から電力会社が長期買取契約(契約期間15~17年)を結ぶようになったこと、2003年にRPS(Renewables Portfolio Standard)法が施行されたことが、追い風になっている。RPS法は、電力会社に対して、発電量の一定割合を、太陽光や風力等の再生可能エネルギ-で発電することを義務付けている。義務付割合は、2003年度0.87%に対して、2010年度1.35%である。政府は、2010年度に3,000MWの風力発電設備を導入することを目標にしている。

風力発電を事業化する際には、風速が強く設備利用率が高い場所を確保すると共に、電力会社と発電した電力の売電契約を結ぶ必要がある。電力会社は、全ての風力発電設備から電力を引き取る義務はない。2003年度に電力会社が実施した風力発電プロジェクトの入札・抽選では、330MWの募集枠に対して2,042 MWの応募があった。全ての応募を電力会社が受け入れていれば、2010年度の政府目標が達成される応募規模である。

今年2月に京都議定書が発効され、日本は温室効果ガスの排出量を2008年~2012年の間に1990年の水準から6%削減することを義務付けられた。風力発電に限らず、環境問題への取り組みは、経済的にはコストアップにつながることが多い。先進的に取り組む企業に対し、インセンティブが働くような政策が望まれよう。

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