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「BRICS4カ国検証」

2005年05月11日

松原 英人

ブラジル、ロシア、インド、中国のいわゆるBRICS4カ国は、昨今、世界的な生産拠点としても、また潜在的な大消費市場としても有望視されている。同地域に投資するファンドの新規設定も相次いでいる。ただし、中でも中国の過熱ぶりは際立っている。反日デモなどはいつもの指桑罵槐(桑を指して槐を罵る)的な話と割り切ることもできようが、経済の方は、過去、国際金融市場で見られたバブルとの類似点も多い。この先、組み入れに際しては慎重に対応すべきであろう。

まず、国際収支の上から投資採算を眺めてみると、BRICS全般に概ね好調なパフォーマンスを示している。各国の国際収支上の金融収益率(投資支出/負債残高)、つまり資金の出し手側から見た場合の投融資利回りは、インドの4.4%が最低だが、中国、ブラジルとも5%台で、ロシアは8.5%もある。これに対して、資金の出し手側の採算、つまり資産勘定に対する受取利子・配当の率は米国の場合、4.1%である。米国から見て、インドの採算はあまり良くないが、ロシアならまだ十分採算が合う。投融資利回りが2.9%しかない日本からなら、4カ国全て採算に乗る。ただし、過去幾多の投資ブームの時と同様、最後の掴み手となるリスクもあるから要注意。

国際収支上のバランスはどうか。過去10年間の累積資本収支(フロー)と外貨準備(ストック)の比較から、高いフローの割にストックの残高がいやに少ないブラジルやロシア(金はどこに消えた?)、あるいはその逆のパターンを示すインド(どこから入ってきたのか?)という違いはあり、それぞれ撹乱要因として留意すべきである。中国については、経常・資本収支の黒字が累積して外貨準備が積み上がっている。これは80年代後半の日本で見られた現象である。流入資本は直接投資主体で、国際収支の安定性という意味では良性だが、為替管理とも相まって国内の信用膨張に直結している。こちらの現象は90年代のタイでも見られた。現状、中国の国内信用(銀行貸出金)の対GDP比率178%というのは、80年代末日本の140%、97年タイの135%は優に超えており、過熱は明らかである。

証券投資では、各国長期国債とも、格付け順に利回り格差が付いている格好だが、中国長期国債(格付けA2)の利回りは4.4%台である。米国トレジャリー(格付けAaa)とのスプレッドはわずか5bps前後にまで狭まっており、これ以上買い上がる余地はなかろう。株式についても、配当利回りが低すぎる上、いかなる矛盾を反映してか、高成長にもかかわらず、ここ数年はむしろ不気味なほどの下落トレンドが続いている。この現象も94年以降のタイで見られた。

ポートフォリオとしてのBRICS投資は、分散を効かせることにより、株式だけなら過去10年のバックテストにおいて円ベースでリスク30%前後、シャープレシオ0.6前後と高いパフォーマンスを達成できている。エマージングボンドとのバランス運用なら、リスク20%とTOPIX並みの水準にまで下げることも可能だ。しかし、中国株については、タイバブルの教訓を生かし、上記国内信用(銀行貸出金)の対GDP比率がタイバブルのピークを明らかに超えた2001以降ポートフォリオから除外してテストし直すと、シャープレシオで0.7~1.0の改善が見られる。今後中国で過熱修正の傾向が顕在化した場合、BRICS全体としてもエマージング・マーケットに特有な伝染効果(contagion effect)の波及は免れないであろうが、中国組み入れへの選別を厳格化することによりその影響を最小化することは可能と思われる。

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