高市政権の積極財政は成長力を高めるか、財政リスクを高めるか
2026年01月07日
2026年の日本経済の注目点の一つは、高市早苗政権の経済財政運営だ。
高市政権は積極財政による投資拡大を通じて潜在成長率を引き上げるとともに、成長率の範囲内で債務の伸びを抑制することで政府債務残高対GDP比を引き下げ、「強い経済」の実現と財政健全化を図る方針である。
近年、国・地方のプライマリーバランス(PB)は赤字にもかかわらず、純債務残高対GDP比は低下している。高インフレを主因に、金利・成長率格差(=名目実効金利-名目GDP成長率)がマイナスになり、「ドーマー条件」が成立したためだ。
だが、ドーマー条件はいずれ成立しなくなるだろう。今後は物価上昇率の低下や金融政策の正常化が見込まれるからだ。1981年度まで遡っても、ドーマー条件が成立したのは12年間で、全期間(2024年度までの44年間)の27%にすぎない。また、高市政権が拡張的な財政運営を行うことで、2024年度に▲1.8%だったPB対GDP比は一段と悪化しやすい。
そこで、今後10年間の金利・成長率格差が0~+1%pt、PB対GDP比が▲3~▲2%と想定すると、2034年度の純債務残高対GDP比は2024年度から20~50%pt程度上昇すると試算される。
高市政権が描いているように、積極財政によって潜在成長率を引き上げられるかどうかは不透明だ。内閣府や日本銀行が推計した潜在成長率は直近で+0.5~0.7%程度と、2000年代の平均値とおおむね同水準にとどまる。過去の政権は成長戦略を実行してきたが、潜在成長率を引き上げることはできなかった。供給制約の強い現在の日本経済において、積極財政で潜在成長率を高めることができなければ、需要サイドばかり刺激されてインフレが加速し、金利の上昇も招くだろう。
政府が2000年代初めから継続してPBを重視してきたのは、債務残高対GDP比の変動要因(PB、金利、成長率)のうち、政府が唯一、直接的にコントロールできるためだ。高市政権は成長を後押ししつつ、潜在成長率が加速しない事態にも備えてPBに常に目配りし、大災害や経済危機が起きた場合でも財政支出を円滑に拡大できるよう、国債市場からの信認を維持する取り組みが必要だ。
コロナ禍を契機に常態化した大規模な経済対策から脱却し、当初予算をベースとした財政運営に回帰することや、日本成長戦略本部で掲げられた17の戦略分野における優先順位付けや財政支援の効果検証などが求められる。
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- 執筆者紹介
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経済調査部
シニアエコノミスト 神田 慶司

