利益水準の拡大で上昇余地大きい香港市場

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2005年03月22日

  • 由井濱 宏一

足元の香港市場は冴えない展開が続いている。背景には、香港でも金利上昇が進んでいる点がある。事実、HIBOR(3カ月物銀行間金利)の水準は05年年初の0.3%程度の水準から上昇基調に転じ、現時点では2%超の水準まで上昇している。04年末まで高まっていた人民元切り上げ期待が急速に後退し、資金流出を招いていることや米国での金利引き上げ継続観測が影響していると思われる。米ドルとのペッグ制を採用する香港ドルは、資金流出に伴う香港ドルの変動(下落)を防ぐために、HKMAによる為替市場での介入(今回のケースは米ドル売り、香港ドル買い)を実施し、香港ドルの価値を安定させようとする。香港ドル買いのオペレーションがHIBORの上昇に拍車をかけているようだ。

ただ、香港市場の代表的指数であるハンセン指数とHIBORの長期的な関係をみると、必ずしも金利上昇→株価下落の関係は認められない。確かに、通貨危機当時は急激な資金流出に伴って金利が急騰した結果、株価は暴落したが、その他の時期を見るとむしろ金利と株価は正相関の関係で動いているケースが多い。金利低下局面は香港ドルに対する相対的な需要低下・景気後退、金利上昇局面は需要増加・景気拡大局面と捉えられる傾向が強いからだろう。ましてや、現局面は、日本同様、デフレ進行に伴う歴史的低金利状態からの脱却が進みつつある状況で景況は改善しつつある。金利が上昇しているとはいえ、過去の水準に比べると依然として低水準での推移となっている。人民元切り上げ時期は遠のいたとみられるものの、可能性がゼロではない限り香港市場から資金が一斉に流出していく事態は想定しがたく、今後金利上昇ピッチは極めて緩やかなものになるとみられる。金利上昇が継続的な株価下落につながる公算は低いだろう。

一方で、利益水準との関係をみると、ハンセン指数は12カ月先行EPSの水準の動きにほぼ追随した動きになっており、かなり高い相関性が窺える。そして現時点で同EPSは上昇基調にあり、その水準も前回の不動産価格上昇期である97年央の水準に比べるとまだ低い水準にある。確かに利益の伸び率自体は05年は04年に比べると減速が予想されるが、景気拡大に伴い利益水準は今後も上昇が見込めることを考慮すると株価の上昇余地もまだ残されているといえそうだ。

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