地域格差にどう対処するのか~「21世紀ビジョン」インターネット調査から
2005年02月03日
このような折、昨秋、経済財政諮問会議「21世紀ビジョン」に関する専門調査会、生活・地域ワーキング・グループにおいて、インターネット調査が行われている。同調査は、全国の18歳以上50歳未満の男女6000人について(回答者数3300人)、都市人口規模別の人口比に配慮・選定の上で実施されたものである。この調査で興味深いのは、地域間所得格差是正に関する質問だ。地域間所得是正への姿勢を(1)基本的に堅持すべきは24.8%、(2)転換すべき時期を迎えている41.4%、(3)どちらともいえない33.8%、という結果であった。「転換すべき時期を迎えている」が「堅持すべき」を上回っていることは事実であり、この傾向は都市圏の方が強い。しかし、「どちらともいえない」に注目すると、これも無視できない比率であり、大都市圏(東京都、大阪府)では38.4%と、「転換すべき」とする42.8%とほとんど変わらない比率である。また、地域間所得格差があるために国が定めた標準的サービスを実現させるための財源保障についての問いでは、(1)縮小すべきが21.2%、(2)まの水準を堅持すべきが55.4%、(3)どちらともいえないが23.4%であった。「いまの水準を堅持すべき」は大都市圏ほど少なくなるが、それでも45.9%と縮小すべきとする27.4%を上回っている。
アンケート調査の解釈には難しさが付きまとうが、この調査結果からは、「地方のことは地方に」が必ずしも単純に受け取られているわけではない、ということは言えるのではないか。地域へのスタンスのゆらぎは、地方交付税改革論議にも大きな影響を与えているとみられ、モラルハザード論や極端には財源保障の廃止論さえ出てきている。今後、地方での暮らしをどう支えていくのか、都市と地方の関係をどのように構築していくか、という検討なしに、各種改革が進んでいくことは、都市圏に居住する人でさえ戸惑っているといえるかもしれない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2021年01月15日
ポストコロナの人事制度を考える視点
~働く人の意識変化をどう捉えるか~
-
2021年01月14日
2020年11月機械受注
船電除く民需は市場予想に反し2ヶ月連続で増加、回復基調が強まる
-
2021年01月14日
アメリカ経済グラフポケット(2021年1月号)
2021年1月12日発表分までの主要経済指標
-
2021年01月13日
震災10年、被災地域から読み解くこれからの復興・防災・減災の在り方
『大和総研調査季報』 2021年新春号(Vol.41)掲載
-
2021年01月14日
共通点が多い「コロナ対策」と「脱炭素政策」
よく読まれているコラム
-
2020年10月19日
コロナの影響、企業はいつまで続くとみているのか
-
2015年03月02日
宝くじは「連番」と「バラ」どっちがお得?
考えれば考えるほど買いたくなる不思議
-
2020年10月29日
コロナ禍で関心が高まるベーシックインカム、導入の是非と可否
-
2006年12月14日
『さおだけ屋は、なぜ潰れないのか』で解決するものは?
-
2018年10月09日
今年から、夫婦とも正社員でも配偶者特別控除の対象になるかも?
配偶者特別控除の変質