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クラシックに学ぶ投資術

2005年01月18日

俊野 雅司

ここで「クラシック」とは、音楽のクラシックではなく、過去の名言等のことである。アメリカでは、“Classics”というタイトルの出版物の中で、様々な投資家やオピ二オン・リーダーの代表的著作物や発言が取りまとめられており、その中には、カリスマ的な投資家の1人テンプルトン卿(Sir John Templeton)が語ったとされる投資格言も掲載されている。

その中で、テンプルトン卿は、得てして投資家が他人と同様の行動を採用しやすい点に言及して、「大多数の投資家と何か違ったアプローチを採用しない限り、卓越したパフォーマンスを達成することは不可能である」、「割安株を買う唯一の方法は、ほとんどの投資家が売っているものを買うことである」と指摘している。

これらの投資格言は、バリュー株投資の真髄と考えられる。実際、テンプルトン卿は、グローバルな視点での小型バリュー株投資で大成功を収め、自ら経営する運用会社を大いに発展させたという実績を誇っている。ところが、この格言には、「落ち」が付いていて、「(上記のようなアプローチのもとで割安株を買うためには)最高に強い精神力が必要である」とも述べられている。すなわち、「他の投資家と同様に行動する方が精神的にはずっと楽であり、自分だけが大損するかもしれないという不安に打ち勝って、敢えて他人と別行動することが現実的には容易でない」という事実がバリュー株効果の背景にあるのであろうと理解することができる。

テンプルトン卿は、さらに「常に同じ運用対象資産や銘柄選択手法に固執すべきではない。常に新しいものを受け入れる柔軟性と既存のアプローチに対する懐疑心を忘れてはならない」とも述べている。過去の成功体験に浸ることなく、常に新しい投資手法を検討していく努力が、成功を続けるためには不可欠であると示唆しているのである。

テンプルトン卿のような「1つの道」を極めた投資家の発言は、至って簡明に表現されているが、実行することは必ずしも容易でない。たとえば、セリング・クライマックスの最中にある株式の多くが紙くず同然になってしまう中で、復活を遂げることが見込める少数の株式を特定化することは、現実的には「至難の業」である。

投信(ミューチュアル・ファンド)運用の世界ではカリスマ的な存在のリンチ(Peter Lynch)は、『20の黄金律』の中で、「調査なしで投資することは、手札を見ないでポーカーをするのと同じである」と述べている。さらに、別のカリスマ投資家スレーター(Jim Slater)は、証券投資を始める前に最初にすべき意思決定は、「自分はどのくらいの時間を投資の勉強に割けるかを自問することである」と指摘している。これらの優れた投資家の投資術を実践するためには、しっかりと投資の勉強やリサーチを行って、本物を見極める能力を身につけることが大前提であると言えるのである。

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