液晶価格の底打ちは2Q05、しかしその後の反転上昇は期待できず

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2004年12月22日

  • 杉下 亮太
台湾では液晶パネル市況について楽観的な見方が出始めている。特にキヤノンの液晶露光装置で不具合が報告された11月下旬以来、量産スケジュールの遅れでパネル需給は改善するとの期待が広まったようで、液晶メーカーの株価も反発を見せている。しかし、液晶セクターの業況回復はまだ視野に入っておらず、楽観するのは時期尚早ではないか。

市況下落局面の底が近いのは確かといえるだろう。指標の17インチモニターパネル価格は04年6月のUS$290だったのがUS$155-160まで下落しており、下落率は50%近い。しかも現在の価格水準は台湾の上位メーカーのキャッシュコスト(償却前コスト)近辺と推定され、メーカー側としてはこれ以上の値下げに応じにくい状況となっている。ただし、韓国メーカー、中でも第6世代工場の量産を開始したLGフィリップスLCDが台湾メーカーに先行する形で価格を下げている模様であり、パネル価格の下落自体はまだ止まっていない。年末商戦向け出荷のピークをすでに過ぎたこともあり、2Q05までは緩やかながら価格の下落傾向が続く可能性が高いと予想される。

問題はその後にパネル価格の反転上昇が生じるかどうかである。パネル価格がこれまでに5割近く下落した一方で、部材コストは最大で四半期に5%程度しか下落が期待できないため、やはりパネル価格上昇なしには収益性の大幅な改善は見込み難い。しかし、05年は供給能力の増加ピッチが年末にかけて加速する見通しとなっており、パネルの需給バランスが急速に改善することは期待できないと考えられる。価格低下によって需要は喚起され始めている模様だが、05年の需給ギャップは4割近いと試算され、均衡までには時間がかかる。キヤノンの露光装置の不具合は需給バランスにプラス要因となるが、量産開始前の装置トラブルであり、また原因が特定されているために、数ヶ月で問題は解決する可能性が高い。05年の供給に与える影響も数%と計算され、需給ギャップを完全に解消するには至らないだろう。

こうしてみると、パネル価格は2Q05に底を打った後、低位で安定的に推移する公算が大きく、パネルメーカーの業績環境は厳しい状況が続くと予想される。下位メーカーについては、05年を通じて赤字から脱却できない可能性が高い。上位メーカーも05年後半に四半期ベースで一ケタ台前半の利益率を出すのがせいぜいではないか。

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