配当政策の充実で個人投資家の取り込みを
2004年12月08日
では、そうした堅調な相場を支えるのは一体誰なのか。現状を踏まえれば、やはり外国人ということになるのだろう。2003年ほどではないにしろ、2004年も結果的には外国人が大量に日本株を買い越す構図となり、国内勢の買いは影を潜めた。しかし、外国人の日本株買いも未来永劫、継続するとは限らない。日本株の魅力度や、資産構成上の制約などから、投資余力は限界的に低減していくだろう。そうなったときに、第2、第3の買い手が現れてこない限り、堅調な株価推移も到底おぼつかない。年金のような機関投資家に、かつてのような買いを期待できないことから、外国人に次ぐ買い手の最有力として浮かび上がるのは国内の個人投資家である。
来年4月からはペイオフ全面解禁がスタートし、これを機に個人資金が流動化する(株式市場にも資金が流れ込む)可能性も十分ある。ただ、バブル崩壊で深手を負った個人に、株式投資への関心を抱かせるのは、一筋縄ではいかないだろう。株式投資に資金を振り向けさせる決定的な“何か”が必要である。最も手っ取り早くて、かつ最も有効なのは、配当性向の引き上げではなかろうか。最近の個人向け金融商品の中で、最大のヒットは毎月分配型の外債ファンドであると言われている。低格付け高利回りの債券に投資することで、高水準の分配金の払い出しを可能にしている商品だ。この商品とて、元本割れリスクとは無縁ではないが、投資家が何より重視しているのは毎月の分配金なのである。こうした投資行動は、株式も企業の配当政策次第で、より多くの個人の投資対象となり得ることを示唆している。リストラの一巡と業績回復で、必要以上のキャッシュを蓄積する企業は、これまで以上に積極的な株主還元を実施していくべきであろう。企業の意識改革は、個人の株式投資に対する意識を変え、さらにそれが相場好転に結び付く、好循環の“初めの一歩”なのかも知れない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2022年08月09日
企業に求められる人的資本と企業戦略の紐づけ、および情報開示
有価証券報告書における情報開示は実質義務化?
-
2022年08月08日
非農業部門雇用者数は前月差+52.8万人
2022年7月米雇用統計:雇用環境は堅調、労働需給はタイトなまま
-
2022年08月05日
2022年6月消費統計
感染状況の落ち着きから、緩やかな回復基調を維持
-
2022年08月05日
内外経済とマーケットの注目点(2022/8/5)
米国市場では8/10に発表される7月の消費者物価が注目される
-
2022年08月10日
多様化時代の金融サービス業のあり方
よく読まれているコラム
-
2022年07月21日
2022年度の最低賃金引き上げはどうなるか
-
2015年03月02日
宝くじは「連番」と「バラ」どっちがお得?
考えれば考えるほど買いたくなる不思議
-
2022年01月12日
2022年米国中間選挙でバイデン民主党は勝利できるか?
-
2021年12月01日
もし仮に日本で金利が上がり始めたら、国債の利払い費はどうなる?
-
2006年12月14日
『さおだけ屋は、なぜ潰れないのか』で解決するものは?