配当政策の充実で個人投資家の取り込みを

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2004年12月08日

  • 壁谷 洋和
2004年も残すところ1ヶ月弱となり、2005年が視野に入る季節となった。この時期、株式市場関係者にとっての最大の関心事は、何と言っても来年の相場展望である。2004年の株式相場を振り返ると、2003年末に10,676.64円の水準にあった日経平均株価は、4月26日に2004年の高値(12,163.89円)を付け、5月17日に安値(10,505.05円)を付けた。その後、再び日経平均株価が12,000円に近づく場面も見られたが、夏場以降は基本的に11,000円を中心とした値動きとなり、11,000円±400円のレンジで株価推移が繰り返された。2004年は前半に“勝負あり”といった感じで、年後半の投資家はひたすら我慢の相場を強いられた。2005年の相場に関しては、底上げを期待する向きが多い。ミクロの企業業績に目を向けると今のところ、来期は伸び率こそ鈍化するものの、増益は確保される見通しにある。マクロのGDP成長率についても、今期+3.2%に対して来期+1.3%(DIR予想)と、景気の減速は避けられない見通しだが、モメンタムとしては年後半からの回復が見込まれている。バリュエーションや海外株価との比較で見ても、2005年に日本株がさらに売り込まれると考える投資家は恐らく少ないだろう。現時点ではどちらかと言うと、堅調な相場展開を予想する声が多い。

では、そうした堅調な相場を支えるのは一体誰なのか。現状を踏まえれば、やはり外国人ということになるのだろう。2003年ほどではないにしろ、2004年も結果的には外国人が大量に日本株を買い越す構図となり、国内勢の買いは影を潜めた。しかし、外国人の日本株買いも未来永劫、継続するとは限らない。日本株の魅力度や、資産構成上の制約などから、投資余力は限界的に低減していくだろう。そうなったときに、第2、第3の買い手が現れてこない限り、堅調な株価推移も到底おぼつかない。年金のような機関投資家に、かつてのような買いを期待できないことから、外国人に次ぐ買い手の最有力として浮かび上がるのは国内の個人投資家である。

来年4月からはペイオフ全面解禁がスタートし、これを機に個人資金が流動化する(株式市場にも資金が流れ込む)可能性も十分ある。ただ、バブル崩壊で深手を負った個人に、株式投資への関心を抱かせるのは、一筋縄ではいかないだろう。株式投資に資金を振り向けさせる決定的な“何か”が必要である。最も手っ取り早くて、かつ最も有効なのは、配当性向の引き上げではなかろうか。最近の個人向け金融商品の中で、最大のヒットは毎月分配型の外債ファンドであると言われている。低格付け高利回りの債券に投資することで、高水準の分配金の払い出しを可能にしている商品だ。この商品とて、元本割れリスクとは無縁ではないが、投資家が何より重視しているのは毎月の分配金なのである。こうした投資行動は、株式も企業の配当政策次第で、より多くの個人の投資対象となり得ることを示唆している。リストラの一巡と業績回復で、必要以上のキャッシュを蓄積する企業は、これまで以上に積極的な株主還元を実施していくべきであろう。企業の意識改革は、個人の株式投資に対する意識を変え、さらにそれが相場好転に結び付く、好循環の“初めの一歩”なのかも知れない。

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