西武・日テレ問題で、高まる内部統制の重要性

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2004年11月17日

  • 吉井 一洋
西武鉄道、日本テレビの有価証券報告書の虚偽記載関連のニュースが連日報道されている。これらの事件が生じた原因としては、実質株主に関する記載内容が公認会計士等による監査の対象外であったことや財務局等の審査人員不足など、外部のチェックが不十分であった点が指摘されている。それと共に、そもそも開示企業自体の情報管理体制が不十分で、適正な情報開示を行うための内部のチェック機能が働いていなかったという、内部統制上の不備も大きな原因として挙げられている。

2002年に改訂された監査基準では、内部統制を「企業の財務報告の信頼性を確保し、事業経営の有効性と効率性を高め、かつ、事業経営に関わる法規の遵守を促すことを目的として企業経営に設けられ、運用される仕組み」と定義している。内部統制は、経営理念・方針、取締役会等の機能、社風等の統制環境、経営リスクの評価、権限・職責の付与等の統制活動、情報の適宜・適切な伝達、モニタリングという5つの要素から構成される。西武鉄道や日本テレビは、このいずれの要素においても問題があったと思われる。

内部統制の構築は、経営者が責任を負うべきものである。実際、昨今の株主代表訴訟関連の判例でも、経営者には有効な内部統制を構築する責任があり、社内の違法行為を「知らなかった」というだけでは、免責されない旨を示している。会計基準の整備、委員会等設置会社の導入など、わが国の制度は諸外国と比べ遜色の無いレベルまで改善されており、今後は運用面でのキャッチアップが重要となる。米国ではサーベインス=オクスリー法により、CEO・CFOに財務諸表等が適正である旨の証明を求めるだけでなく、内部統制の構築に責任を負わせ、その有効性の評価と報告を義務づけている。わが国でも経営者に同様の証明・報告を義務づけ、内部統制の構築・改善を促すことが望まれよう。

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