「トップページにリンクを・・・」?
2004年11月12日
ウェブページをながめていると,よくこんなフレーズに会うことがある。「このサイトはリンクフリーです。ただし,リンクはトップページにお願いします。また,リンクした際は,こちらにご一報下さい」
大手新聞社のサイトでも,以前はこのような注意書きが書かれていた。つまり個々の記事に直接アクセスできるリンクはやめてくださいよ,ということである。その理由は簡単で,ページビューを集めることで広告収入を稼いでいるサイトにとっては,最大のページビューを誇るトップページをバイパスされたらたまらない,というわけである。これは,ディープリンク問題といって,ここ数年ネット上でもさかんに議論されてきた。
そもそもインターネットが,メディアとして他に優れる最大の強みは,他の文書との連携の構築の仕組み,つまりハイパーリンクにある。特に情報検索の場面では,このおかげで紙や電波媒体よりも,格段にパフォーマンスの高いメディアとなった。そうした中で,トップページにしかリンクを張れないという制限は,このインターネット最大の長所を損なう行為だったのである。
しかし,そんな状況も最近次第に変わりつつある。
新聞社サイト大手のアサヒ・コムがディープリンクの最たるものであるRSSを配信し始めた。RSSとは,言ってみれば最新記事の要約つきディープリンク集である。つまり,RSSを購読すれば,トップページを経由することなくアサヒ・コムの最新記事にアクセスできる。
こうした状況の変化は,検索エンジンであるグーグルの普及やさらにブログの発生が一因であろう。しかし,それも実は結果であって,潮流としては,インターネットが本来の長所をより強力に発揮し始めた。その潮流に逆らえなかったということだと考える。
例えば,グーグルはその検索機能を利用して,ニュース記事を一覧するページを作成している。何と610サイトからの最新情報を収集しているとのことである。つまり,これはディープリンクを集積したページである。また,ブログとは,個人の日記やコラムなど,逐次更新されていく記事を記録していく新しい形のウェブサイトであるが,その記事には,他のブログやニュースのリンクを張り,引用することが多い。そればかりか,リンクや引用をした場合,その元となる記事のブログページに自分のリンクを「無断」で張ることができる。これは,トラックバックというブログの重要な機能である。
これまでのウェブは,通常のウェブサイトによく見られる「リンク集」のページによって,サイトとサイトが連携するというのが通常であった。例えば,サッカーファンのウェブサイトであれば,そのサイトの中に,同じチームをサポートする他サイトのトップページのリンクを集めたリンク集を置くという方法である。しかし,ブログの登場によって,サイトの中にある記事と記事が直接連携し,お互いにコミュニケーションを図ることで,より高い質のコンテンツ作成が可能となったのである。こうして,ウェブの利用は,これまでのサイトとサイトの連携から,ページ同士の連携へと,より高度に進化してきている。
ブラウザーの先駆けとも言えるモザイクが登場して11年。ウェブの世界は画像の添付,さらには音声や動画の利用と,よりリッチなコンテンツの利用という面で進化してきた。そして,「トップページにリンクを・・・」の文字が消えた新聞社のサイトやブログの普及に見られる現在の変化は,ウェブ本来の利用方法という面で,インターネットに新たな境地を切り開いてくれるのではないだろうか。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
- 執筆者紹介
-
マネジメントコンサルティング部
主任コンサルタント 神谷 孝
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
0.50%への利上げが家計・企業に与える影響
家計では「30~40代」の世帯、企業では「中小」で負担が大きい
2025年01月22日
-
CISA が初の国際戦略を発表
DIR SOC Quarterly vol.10 2025 winter 掲載
2025年01月22日
-
「103万円の壁」与党改正案の家計とマクロ経済への影響試算(第4版)
71万人が労働時間を延ばし、個人消費は年0.5兆円拡大の見込み
2025年01月21日
-
欧州サイバーレジリエンス法(EU Cyber Resilience Act)の発効
DIR SOC Quarterly vol.10 2025 winter 掲載
2025年01月21日
-
Scope3排出量の削減目標達成にカーボンクレジットは使えるようになるのか?
2025年01月22日