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米国における大学経営について

2004年10月27日

鈴木 誠

10月16日付けのフィナンシャルタイムズ紙週末版は「How Harvard Got Ahead」と大見出しの記事を掲載した。記事によれば、これまで世界のアカデミズムの頂点に位置したオックスフォードとケンブリッジ両大学が米国のハーバードに遅れをとっていることが指摘されている。たとえば、「夜、米国の大学キャンパスを歩くとそこここの窓には灯りが見えるが、オックスフォードでは食堂の灯りしか見られない」と自嘲気味の記事からはオックスブリッジ(オックスフォードとケンブリッジ両大学を指す)の学生の勉強量が相対的に不足していることが原因のようにも受け取られる。

しかし、競争力の後退の原因はこうした学生の勉強に対する態度とは別なところにあるようである。言うまでもなく、学生は著名教授の元に多く集まる。したがって、著名教授を確保することが大学にとって必要条件となる。他方、著名教授を他大学から確保する、あるいは囲い込むということには好ましい研究条件や環境を整える必要が大学運営上必要とされる。つまり、大学財政の確立と著名教授の確保が大学運営上の必要十分条件とされるのである。

フィナンシャルタイムズ紙では、「オックブリッジでは、4000ポンドの年間の授業料に対して、生徒一人につき1万ポンド以上の教育経費がかかっており、ケンブリッジでは年間11万ポンドの赤字となっている。したがって、赤字を埋めるために校舎の改修や設備の導入、さらに教授陣への厚遇を諦めざるをえないことになっている。」と述べられており、財政の不安定さが競争力を次第に失わせる結果となったと見られる。

では、米国の大学は如何に財政が運営されているのであろうか。米国大学はわが国の大学とは異なり、中央政府からの助成金に相当するものは存在しない。州立大学や市立大学の場合の運営主体は地方政府であるので、ここでは、話を私立大学に限定して進めたい。ハーバードに代表される私立大学の場合、その運営資金の多くは大学基金によって拠出されている。この比率は有名大学になるほど高い傾向にある。例えば、エール大学基金から大学運営への拠出比率は3割に至っている。ちなみに、大学基金の保有する資産残高は上位よりハーバード188億ドル、エール110億ドル、プリンストン87億ドルである。

こうした豊かな大学基金は、こうした潤沢な資産をただ銀行に預けて置くようなことはしない。積極的な資産運用によって、より多くの資産を生み出す努力を日々行なっている。エール大学基金では16名の資産運用担当者により株式、債券からヘッジファンド、プライベートエクイティー(未公開株)まで広い範囲での投資が行なわれている。特に、ヘッジファンドやプライベートエクイティーへの投資比率は4割を超えている。

わが国において「大学への全入」の時を迎え、大学経営はいよいよ正念場を迎えることとなるが、財政基盤の確立が急務と見られる。

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