中国のエネルギー問題
2004年09月09日
世界の2020年までの一次エネルギー消費は年率2.1%増の一方、中国を含むアジア地域は年率3.4%増で拡大すると予測されている(日本エネルギー経済研究所)。中でも、中国のエネルギー消費は1990~2000年に39%増加したが、2000~2010年には51%、2010~2020年には47%増加し、世界シェアは2000年の10.3%から2020年には15.2%へ上昇する見通しだ。莫大な人口を抱える中国では、経済が成長するにつれて生活水準が向上し、「モータリゼーション」と「電力化」が進展している。同国のエネルギー消費の約7割は石炭であり、2020年までの世界の石炭需要増加分のうち、中国は実に43%も占める見通しだ。経済成長とともに中国のエネルギー消費は益々拡大し、世界のエネルギー逼迫要因として作用しよう。
これに伴い、解決すべき課題も多い。エネルギーの安定確保(国内輸送の確保や設備の効率化)や石炭中心のエネルギー消費を続ける場合の環境問題への配慮などだ。解決策として、天然ガスへのシフトや環境関連法令の適用が考えられるが、天然ガスは石炭の約3倍の費用がかかり、環境税などの導入もコスト増を伴うものだ。このため、財政面での優遇政策の導入が必要だろう。中国におけるエネルギー消費の増加が必然であるなか、中国がこのまま環境問題への配慮なしに石炭中心のエネルギー消費を続けた場合、地理的に近い日本に悪影響が出ることは間違いなく、中国の環境汚染は中国固有の問題と切り捨てることは難しい。環境面から考えても、中国は「単なる隣国」ではすまされず、その政策動向が注視されよう。

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