米銀の伝統的戦略

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2004年08月24日

  • 田中 一嘉
米国の銀行は、個人向けサービスの拡充に積極的である1 。1990年後半には、このサービス拡充の手段として、オンライン・バンキング、コール・センター、あるいはATM(1993年94822台、2003年371000台)が導入された。しかし、銀行は、このような技術革新にばかり頼ってはいない。伝統的な”bricks-and-mortar(家屋)”は、重要なリテール戦略を担っており、着実にそのネットワークを広げている。特に、100から500の支店をもつ中規模銀行は、合併や買収などを通じて支店網の拡大に努め、同時に、営業エリアの開拓も行われている2 。2001年から2003年の2年間で、中規模銀行の支店数は、4.8%増加(中央値)した。

 ところで、米国の銀行数(預金保険機構対象)は、1980年代をピークに、その後は減少傾向にある。貯蓄金融機関も1988年の3677行から2003年には1413行へ減少した。1980年代に発生した貯蓄金融機関危機により、貯蓄金融機関の数は、1980年代後半から1990年代前半にかけて急激に減少した。この間、貯蓄金融機関の支店の数も1988年の22171店舗から1994年13946店舗へ減少、その後は、緩やかなペースでの減少にとどまっている。商業銀行は、1984年に14496行あったものが、2003年には7769行と半数近くになった。しかし、支店数は、1934年以降、増加傾向にある。一行当りの支店数も、1950年0.6店舗、1970年1.6店舗、1990年4.1店舗、2003年8.7店舗と増加している。

 このように、支店網が拡大する要因は何であろうか?一般的に、支店網の規模が大きくなるのに従って、サービス手数料も高くなる。それでも顧客がより規模の大きな銀行を選好するのは、地理的な利便性に高いプレミアがつけられているからである。

1 本文は、Hirtle, B,. and Metli, C., ”The Evolution of U.S. Bank Branch Network: Growth, Consolidation, and Strategy”, Current Issues, FRB New York, Vol. 10, Number 8, July 2004 を基にしている。
2 これには、州際営業規制を撤廃したthe Riegle-Neal Act of 1994や銀行による証券販売規制の緩和をしたthe Gramm-Leach-Bliley Act of 1999も影響している。

本支店の店舗数

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