トランプ2.0で加速する人手不足を克服できるか

~投資増による生産性向上への期待と課題~『大和総研調査季報』2025年秋季号(Vol.60)掲載

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2025年10月24日

  • ニューヨークリサーチセンター 研究員(NY駐在) 藤原 翼
  • 経済調査部 主任研究員 矢作 大祐

サマリー

第2次トランプ政権が目指す米国経済の高成長にとって、人手不足が懸念材料だ。ベビーブーマー世代の退職に加え、厳格な移民政策を実施していることで、労働供給は大幅に抑制される見通しだ。他方で、第2次トランプ政権下では、トランプ減税2.0やAI分野を中心とした大規模な対米投資が生産性上昇をより促進させることが期待される。

労働投入量と労働生産性に分けて米国の潜在成長率をシナリオ別で試算すると、現状のような厳格な移民政策による労働供給制約が重しとなる一方で、AI活用が進むことで高い生産性上昇率が実現すれば、2%程度の潜在成長率を維持することは十分に可能と考えられる。

もっとも、生産性の上昇は均一に進むわけではない。今後はAIが生産性上昇を主導するとみられる中で、「AIの恩恵を受けやすい一部のサービス部門」と「AIの恩恵を受けにくい業種」との間で生産性の上昇に偏りが生じ得る。そして、人手不足の懸念が強いのは、生産部門等のAIの恩恵を受けにくい業種だ。人手不足と生産性上昇の間のミスマッチを解決できるかが、米国経済の安定的な成長軌道を実現する上でも重要となろう。

大和総研調査季報 2025年秋季号Vol.60

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