企業のリスクと情報開示

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2004年08月20日

  • 大村 岳雄
続く企業の不祥事
昨今、通販やカード会社等の顧客情報の流出、自動車メーカーの部品の不具合や原子力発電所の未点検に起因する事故、など企業の不祥事は絶えない。企業経営にとってリスクマネジメントは、かつての環境や製造物責任の問題以上に、対象も広く重要な経営課題となってきている。そのため、ここ数年、企業側も法令遵守のための社内研修、倫理行動基準の策定、コンプライアンス専門の部署やコンプライアンス委員会の設置など、リスク管理体制の整備を進めてきている。しかし、一般投資家には、上場企業のリスクに関して殆ど情報を得る手段はなかった。

開示制度の整備と閲覧システム
証券市場の構造改革の議論が活発化した平成14年には、12月16日に金融審議会第一部会から「証券市場の改革促進」が公表された。この中で、投資家保護と市場への信頼性の向上を図る観点から、ディスクロージャーの充実・強化を図る必要があるとされ、具体的には、企業統治(コーポレート・ガバナンス)の実態を積極的にディスクローズすることにより企業統治への取り組みを市場に明らかにすべきとの提言が盛り込まれた。これを踏まえ、平成15年3月31日付で企業内容等の開示に関する内閣府令が改正され(下表1)、有価証券報告書での新規開示項目が追加された。また、金融庁は今年6月から有価証券報告書などの企業の法定開示資料についてインターネット(閲覧システム「EDINET(エディネット)」)で提出するよう義務付け、3月期決算企業から開示が始まった。開示資料はこのEDINETのホームページ(http://info.edinet-fsa.go.jp/)で誰でも見ることができるようになった。

開示状況は制度導入の初年度であることから内容は様々であるが、投資家にとって企業の将来性を判断する材料が増えたことは、大きな前進である。そして何より、企業に求められるのは、リスクが発現しないための内部統制の体制作りと役職員の意識改革である。


表1.開示項目の新旧対象表
(有価証券届出書、有価証券報告書の様式)
改正後改正前
事業の状況
  1【業績等の概要】
  2【生産、受注及び販売の状況】
  3【対処すべき課題】
  4【事業等のリスク】(新設)
  5【経営上の重要な契約】
  6【研究開発活動】
  7【財政状態及び経営成績の分析】
 (新設)
第2 事業の状況
  1【業績等の概要】
  2【生産、受注及び販売の状況】
  3【対処すべき課題】
  4【経営上の重要な契約】
  5【研究開発活動】
第4 提出会社の状況
  1【株式等の状況】
  2【自己株式の取得等の状況】
  3【配当政策】
  4【株価の推移】
  5【投資の状況】
  6【コーポレート・ガバナンスの状況】
 (新設)
第4 提出会社の状況
  1【株式等の状況】
  2【自己株式の取得等の状況】
  3【配当政策】
  4【株価の推移】
  5【投資の状況】

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