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ヘーグ証券条約と「法例」と間接的保有有価証券

2004年08月19日

中田 綾

わが国には「法例」と呼ばれる法律がある。法例は、渉外事件において適用する法令(準拠法)を指定する法律(抵触法)である。例えば、日本国内で投資家A及びBは日本国内に所在する証券会社Cを通じてD国で発行された株式の売買を行い、この取引の権利義務関係について日本国内で訴訟が起きたとする。裁判所は、どこの国の法律を準拠法として適用するかを法例に従い決定する。法例では「目的物である証券の所在地法を準拠法とする」と規定されているため、株券が存在するD国の権利義務を定める法律が適用されることになる。

このような準拠法の決定について、次の問題点が指摘されていた。(1)抵触法は各国により異なるため、裁判地によって準拠法が異なる恐れがある、(2)各国の有価証券から構成されるポートフォリオの場合など、どの国の法律を適用するかを決定することが困難な場合がある、そして、(3)株券等のペーパーレス化により、目的物である有価証券の所在地法を準拠法とする規定では対応できなくなることである。そこで、これらの問題に対処するために、ヘーグ国際私法会議において「口座管理機関によって保有される証券についての権利の準拠法に関する条約(ヘーグ証券条約)」が採択された。同条約では、間接保有形態の証券について、原則として「口座名義人とその関連口座管理機関との間で特別の合意がある場合には、合意された国の法律」を準拠法とすることが明確に定められている。

日本では、6月に「株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、株券不発行制度が一斉・強制的に導入されることが決まった。株券のペーパーレス化が進み、ますます現在の法例では渉外的な問題に対応できなくなる。ヘーグ証券条約はこのような法的不安定性を取り除くことができ、少なくとも批准の検討の余地はあろう。海外の金融・証券関係者によるヘーグ条約の支持は高く、EUやアメリカなどの主要国は同条約の批准のための準備を進めているという。国際競争力の観点からも日本だけが出遅れることがないことを望む。

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