インターネットをフル活用し、企業は株主との対話性を向上させよう

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2004年06月07日

  • 本谷 知彦
株主総会の季節がやってきた。商法改正によりこの1~2年、インターネットを利用した議決権行使の導入や議事進行模様の映像配信といったスタイルの総会運営が大きな話題を呼んでいる。今年は約250社もの企業がインターネットによる議決権行使を行うのだそうだ。

株主総会は株主と企業側が互いに向き合い場の空気を共有するという点で、株主にとって企業経営のダイナミズムを体感できる絶好のイベントである。時間的・地理的制約で必ずしも全ての株主が出席できるわけではない中、このような潮流は大いに歓迎すべきであろう。又、上場企業は「株主総会」という会議形式にこだわらずとも、少々大胆だがインターネットカンファレンスのようなスタイルを積極的に導入し、年に数回程度実施して株主との対話を更に活性化してみてはどうだろうか。インターネットで取引ができる時代である。企業と株主との対話がネット化していても不思議ではない。

オンライントレードが日本で始まって8年。バブル経済で一度は萎んだ個人投資家のマインドと裾野は最近の株式相場の活況も手伝って再び向上/拡大しつつある。だが無作為な個人投資家の拡大はギャンブル感覚の「個人投機家」の拡大を助長しないだろうか。デイトレーダーの存在を真っ向から否定するつもりはないが、やはり成長性への確信やビジネスの社会的意義への共鳴を契機として、虎の子の資を意中企業へ託し投ずるような、中長期的な保有を期待できる個人投資家の拡大が望ましいと思われる。そのためにも企業経営のダイナミズムを個人投資家に体感してもらう施策は肝要だ。

財務情報の四半期開示が当たり前の時代になり、インターネットで容易にそれらを入手できる一方、企業側による片方向の情報発信が未だに主であり、企業と株主との対話の進歩はまだ緩い。株主優待の充実など個人投資家拡大に向けた企業側の努力姿勢も見受けられるが、格安チケットショップで様々な株主優待券が当たり前のように陳列されている様を見ると、せっかくのIR努力も水の泡だ。

ブロードバンドの普及でインフラは整った。インターネットをフル活用し対話性を是非向上して欲しいものである。もっとも、株主の存在を面倒に思ったり、株主総会を単なる儀式と捉えるアナクロな企業にはこの声も届かないだろうが。

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